お待たせ1号! プロ野球は首都圏と関西で練習試合を再開し、阪神の新助っ人ジャスティン・ボーア内野手(32)が対外試合初アーチを放った。甲子園での広島戦に「4番一塁」で先発。4回に2番手藤井皓の内角高め直球を捉え、無観客の右翼席に先制2ランを運んだ。メジャー通算92発の主砲から、実戦18試合、45打席目でようやく1発が飛び出した。ベンチでは「サイレントトリートメント」で祝福を受けた。

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ボーアの打球がやっと、舞い上がった。詰まっても、浜風も関係なし。右翼席へ着弾を確認すると、193センチ、122キロの巨体を揺らしてゆっくりダイヤモンドを1周した。「ちょっと詰まったんですけれど、ホームランにするには十分な力でスイングできたので良かったです」。実戦初打席から108日目。自身の、首脳陣の、そして虎党の煩悩を振り払う来日1号となった。

0-0で迎えた4回無死一塁の第2打席。カウント1-2から広島の2番手藤井皓の内角高め直球をコンパクトに振り抜き、決勝の先制2ラン。2月15日の来日初実戦から試合前まで、オープン戦などを含め17試合、43打席ノーアーチ。安打8本も全て単打と、状態を不安視する声もあった。チーム活動再開後の紅白戦2試合を経て、豪快弾で不安を一掃した。「今日はファンがいなかったですけれど、自分の中でたくさんのファンをイメージしながら走りました」。満員のスタンドを想像する余裕で打席を振り返った。

メジャー流「サイレントトリートメント」の祝福も受けた。本塁打後、戻ったベンチで迎える選手は皆無。矢野監督ですら仏頂面だったが、少し間があって大きな拍手が巻き起こった。「アメリカでルーキーにやるショーを日本でもやってくれて面白かったし、うれしかったよ」。主将の糸原が考案した粋な計らいに笑顔を見せた。予定は3打席だったが志願して4打席目にも立った。「どこの球場でも、日が落ちてくるにつれて影も変わってくる。1度そういうところを見ておきたかった」。細部に気を配る一面ものぞかせた。

指揮官はメジャー92発の本領発揮に「簡単な球ではなかったし、詰まりながらでもいったのは本人の中でも手応えあると思う」と評価。「今日が本当のスタートじゃないの? まだまだ(状態を)上げてもらわないと困るし、こっちとしては期待は大きいので」とさらなる爆発を期待した。打線のカギを握る新戦力は「開幕に向けてしっかり準備して、頑張っていきたいと思います」。B砲が、ここから打球も調子もどんどん上げていく。【奥田隼人】

▼ボーアが実戦18試合目、45打席目で待望の1号。頻繁に引き合いに出されるバースは来日初年の83年、オープン戦初戦の3月6日大洋戦3打席目、5打席目にいきなり2本塁打。ところが公式戦ではチーム19試合目の5月7日ヤクルト戦、自身通算23打席目にようやく初本塁打。近年に活躍した選手でいえば、10年マートンはキャンプ中の練習試合、紅白戦計5試合ノーアーチも、オープン戦開幕戦の2月26日オリックス戦で初回先頭打者ホームラン。公式戦ではチーム4試合目の3月30日広島戦で通算18打席目に1号。ボーアはどうか。