<練習試合:巨人2-2ヤクルト>◇5日◇東京ドーム

#開幕を待つファンへ-。開幕2週間前の5日、各球団の開幕投手がマウンドに上がった。19年目を迎えるヤクルト石川雅規投手(40)はさらなる引き出しを求めた。エースたちは大舞台のための1球1球を、余念なく磨いている。

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“小さな巨人”の投球術の引き出しが、また増えた。ヤクルト石川が挑戦、修正を繰り返す真骨頂を見せた。5回1死で打席には亀井。カウント1-2で、左足をプレートの三塁側にかけた。シンカーは外角低めに外れボール。次は一塁側に足をかけ、スライダーはファウルに。続く6球目。プレートのど真ん中を踏んだ。外角高めのカットボールで左飛に打ち取った。1球ごとに踏む位置を変え、角度に違いをつける玄人にしかできない術。昨季も一塁、三塁側と変えていたが、新たに真ん中も加え3パターンを実戦で試した。位置を変える度に微妙な感覚のズレは生じるはず。しかし「違和感は全然ない。プレートは決められた長さだが、ルールの範囲内で使い方をいろいろ試したい」。開幕まで2週間。シーズン中に連打を許した場合、調子が悪かった場合を想定した挑戦だった。

4回には1死二塁から岡本をシンカーでこの日唯一の空振り三振に。高津監督も「さすが。誰にでもできる技ではない」とうなった1球だった。5回を61球で被安打2の無失点。石川は「内容も結果もという意味では、これ以上ない。シーズンにとっておきたいくらいのピッチングだった」とほほえんだ。

指揮官は「謙虚に、少しずつでも前進しようとする姿勢は、言葉にするより、彼が投げている姿に影響を受ける人がたくさんいる。150キロ、160キロを投げる投手より、印象に残るマウンドになるかもしれない」と開幕を託した理由を明かす。“小さな巨人”が神宮のマウンドに立つ姿は、チーム、ファンを鼓舞する。【保坂恭子】