広島の先発九里亜蓮投手(28)が約1カ月半ぶりとなる2勝目を手にした。中日打線を7回まで6安打を浴びながら、粘り強い投球で無失点に抑えた。今季初登板だった6月24日巨人戦以来の白星。チームは4日から始まった9連戦の勝ち越しを決めた。佐々岡広島に先発の柱を期待される右腕が、ようやく本来の姿を取り戻した。

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九里は気合と冷静さをマウンドで表現した。ふがいない投球を続けた自分への怒りを球に乗せた。序盤に援護点をもらっても走者は背負った。それでも根気強く両サイドを突いて、最後まで集中力を切らせなかった。3点リードの7回は堂林の失策と安打で無死一、二塁のピンチを招いたが、立ち上がりから続けた低めを徹底した投球で後続を断った。

「野手の皆さんに迷惑をかけた試合が多かった。(7回は)1点をやらないという気持ちより、1人1人と勝負していった」

九里にとっては、今季初登板だった6月24日以来となる2勝目。久しぶりに上がったお立ち台で言葉が出てこなかったほど、遠ざかっていた。白星発進した後の登板5試合は勝ち星なし。5試合のイニング数は5、5、5、7、4。6連戦の初戦を任されながら、先発の役割を十分に果たせない試合が続いた。「チームに勝ちをつけられない投球が多々あった。僕自身ローテーションを1年守り切ったことがない。今年は試合数が少ないかもしれないけど、ローテを守り抜きたい」。足元を見つめなおし、危機感を持って中5日での今回に備えた。

九里の持ち味である。大胆さが立ち上がりから見られた。打者の内角を突き、ときに上体をのけぞらせた。大胆かつ丁寧に。低めを徹底した。高さを間違えない投球で中日打線に連打を許さなかった。佐々岡監督は「前回悪かったから気合が入っていた」と認めたように、闘志むき出しのスタイルが前面に出ていた。

チームは9連戦の勝ち越しを決めた。浮上の一因は先発陣にある。野村や大瀬良が復帰したことで9連戦の戦いが安定した。「ずっと言っているように、エラーしたら投手が抑える。投手が打たれたら野手が打ち返す…。それができた」。指揮官は投打が補い合う「一体感」でもぎ取った勝利を評価した。【前原淳】