やられたらやり返す-。左腕を苦手とするロッテが、今季2度目の対決となる西武内海を攻略しリベンジに成功、3連敗を阻止した。9月2日の対戦では5回2安打無得点だったが、再戦は4回5安打4得点。ライバル球団主力投手への華麗な“倍返し”は、実は今季6度目だ。2億円以上を投資して昨年創設したチーム戦略部の分析のもと、今季はいまだ4連敗がない。2度はやられないロッテが、首位ソフトバンクに食らいつく。

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倍返しのキーマンは緊張していた。角中勝也、33歳。「連敗していて1番の1打席目なので、ベンチにとっても重要だし、緊張しました」。内海のカーブをためて、レフト前へ。緊張を打ち消す熟練の技術で、ベンチを勇気づけた。

今日は打てる。2回に2点、3回に1点。浮いた変化球を逃さず捉える。4回2死二塁、3打席目が回った。今度は直球を左中間へ。「(投手の)右左で打ち方を変えているんです。左の方が今はよりいい、って感覚ですね」。若いカウントでは鋭く振り、追い込まれれば粘りに粘る。「右でも左でも(球威に)差されなければ何とかなると思っているので」。首位打者に2度輝いたバットマンの真骨頂を発揮した。

今季77試合目で、63通り目の打順だった。1番角中は8試合目。井口監督は「今日は出塁率(重視)で。塁に出て、かき回そうとしていたので。カクがちょうど合う投手だったので1番にしました」。角中の感性と見事にマッチした。

やり返す準備は、着々と進められた。内海対策の刷新について「ありますよ」と認め「言わないけど」と笑った。19年創設のチーム戦略部が水面下で動く。経験豊富な統計アナリストたちが、各試合を分析。その日の打順や戦略決定にも深く携わっている。

井口監督は、戦略のほんの一端を明かした。「低めで打たせて取る投手。そこを我慢しながら、甘く来たのを積極的に」。放った5安打は、すべて狙い通り。内海への2敗目は、チームの3連敗も意味する。大事な試合で、うってつけの1番打者だった。

シーズン初対決での攻略は、そう容易ではない。開幕戦のソフトバンク東浜に始まり、日本ハム河野、楽天涌井、オリックス山崎福にアルバース。抑えられた相手でも、2度目には勝つ。「チームとしてこうやろうという方針は出し、個々にもミーティングしています。それがいい方向にいっている」。チーム打率が2割4分1厘でも、長く2位にいる理由の1つだ。

残り43試合。西武今井に高橋光、楽天松井、オリックス山岡…と白星でやり返すべき相手はまだいる。「2度同じ投手にやられるのは良くないので」と井口監督。倍返しを続けることが、陰から導いてくれる戦略部への恩返し。一丸となり、ホークスとのしのぎ合いを制す。【金子真仁】

 

◆ロッテの華麗な“倍返し”

◇ソフトバンク東浜 

6月19日=開幕戦で5回2安打で無得点。試合も延長で敗れた。

8月21日=5回までに132球を投げさせ、3点を奪取。試合も逆転勝ち。

◇日本ハム河野

7月19日=7回まで無得点。8回に2点を奪うもルーキーにプロ初勝利を献上。

8月13日=2度目の対戦は5回までに4得点でマウンドから引きずり下ろした。

◇オリックス山崎福

8月6日=初回の好機を逃すとその後は打線が沈黙。6回3安打で無得点。

8月28日=初回に中村奨のソロで先制。6回8安打5得点でリベンジ成功。

◇オリックス・アルバース

8月30日=7回までに6安打を浴びせるも決定打欠く。無得点で3勝目を献上。

9月14日=粘りの攻めが3回以降に結実。5回までに5点を奪いKO。

◇西武内海

9月2日=巧みな攻めに5回2安打に封じられ、ベテランに久々の勝利を献上。

9月17日=相手失策を逃さず、序盤から得点を重ねた。長打攻勢で4回KO。

◇楽天涌井

7月29日=1回に先制もその後は無得点。7回1失点の右腕に今季5勝目献上。

8月26日=初回の好機を逃すも、2回ソロ2発。ベテランに今季初黒星つけた。