セ・リーグ首位を独走する巨人原辰徳監督(62)が、勝利至上主義を貫き優勝マジックを31に減らした。プロ初勝利を目指した先発直江大輔投手(20)を4点リードの5回1死一、二塁で降板させ、継投策へシフト。1回に2点を先取されながら粘った若き右腕が連続四死球でピンチを招いた場面で、個人の白星よりチームの勝利を最優先した。打線は坂本勇人内野手(31)が3安打3打点でセ歴代6位タイの159回目の猛打賞を記録するなど、19安打10得点で打ち勝った。

   ◇   ◇   ◇

宮本投手チーフコーチに続き、原監督がゆっくりベンチから歩み出ると、東京ドームのファンから思わずため息がこぼれ出た。観客の上限を1万9000人とした本拠地初戦で、今季最多1万7193人が集まった。リードは4点。プロ初勝利まであと2死としていた20歳の右腕は、ため息の直後に沸き立った拍手の中、口を結んで一塁側ベンチへと戻った。

原監督 1つの勝利を挙げるというのは難しい。勝利投手になるのは簡単ではない。私自身も今日思いましたし、彼もそれを思って、精進してほしい。

1回に2点を先取された直江は、2回以降フォークを丹念に落とし、4回まで1安打投球。頼りの打線が4回までに6点を奪い、プロ初勝利へ強力に援護してくれた。

だが5回1死から再び制球を乱す。代打正随に対して3球連続で直球が高めに抜けて四球。続く1番大盛には3球目の直球が死球になった。打席に1回に2ランを許した2番田中広を迎えた場面で球数はプロ入り最多の85球に達した。指揮官は「3番、4番を迎える。ホームランを打たれているバッターも含めてね。4点差というのはまだまだ分からない」と決断した。

降板直後のベンチでは、直江を隣に呼び寄せた。「もうちょっとだと。もうちょっと。勝利を挙げるのは簡単なことではない」と諭した。2軍監督として指導した阿部1軍ヘッドコーチ代行にも叱咤(しった)された右腕は、ベンチの最前列で目を充血させた。「最後の最後で自分の弱いところが出てしまった。そこが一番悔しいです。悔しい」。広報を通じたコメントに「悔しい」を2回使い、無念さをにじみ出した。

直江の降板後は大江、鍵谷とつなぎ、5回を無失点で切り抜け、終盤の継投策に入った。マジックが順調に減っても、気の緩みとは無縁。原監督は「こっちだって彼に勝利投手になってほしい」と、最善策のリレーで着実に1勝を積み上げた。【前田祐輔】