広島長野久義外野手(35)が古巣相手に球団通算8500号&プロ野球39人目の全12球団からの本塁打となる5号3ランを放った。開幕11連勝中と無敵を誇る巨人菅野から放った一時逆転の一撃は、チーム、そして個人にとっても記念の1発となった。しかしチームは今季6度目のサヨナラ負けで3連敗。借金は今季ワーストの「11」となり、記念弾は勝利につながらなかった。

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「6番、レフト、長野」。東京ドームに鳴り響く場内アナウンスが流れると同時に、左翼席の左端を赤く染める広島ファンだけにとどまらず、客席の大半を埋め尽くす巨人ファンからも大きな拍手が湧き上がった。1万6732人の歓迎ムードにも後押しを受けたのか、長野の放った打球は左中間スタンドに向かってぐんぐん伸びた。

「2アウトから誠也と松山がチャンスを作ってくれたので返すことができて良かったです」

山本浩二、緒方孝市、前田智徳、鈴木誠也…。名だたる名プレーヤーが放ってきた球団のメモリアル弾に「長野」の文字が加わった。2点を追う4回、2死から鈴木誠、松山が連打でつないで迎えた一、三塁の打席。カウント2-1からの4球目、巨人菅野の外角スライダーに食らいついた。一時逆転となる1発は、球団通算8500本目のメモリアル弾となった。同時に、巨人戦並び東京ドームでは移籍後初の1発で、プロ野球39人目となる全12球団からの本塁打を達成した。

広島に移籍してから2年目。今ではチームになくてはならない貴重な役割を担っている。今季加入した新助っ人のピレラには“手裏剣ポーズ”を伝授。最近ではお互いが打つ度に、両手を高く上げ、その後抱き合って喜びを分かち合う。今季は不振続きで、苦しむ同い年のK・ジョンソンにも自ら歩み寄るなど、外国人選手にも率先してコミュニケーションを図る。そんな心遣い、気遣いがあるからこそ、チームメート、鯉党、そして古巣のファンからも愛される。

記念のアーチは惜しくも決勝弾とはならず、チームはサヨナラ負けで3連敗。借金は今季ワーストを更新する「11」にまで膨らんだ。依然苦しい状況は続く。長野は「チームが勝てればよかったんですけど…。また明日から1戦1戦頑張ります」と切り替えた。残り41試合、最後までフォアザチームで戦い抜く覚悟だ。【古財稜明】