中日での現役時代、コーチ時代、2度の監督時代など、何度も高木守道氏と共闘した東大野球部監督の井手峻(たかし)氏(76)が、ミスタードラゴンズの思い出を語った。

井手氏は11年オフ、球団首脳として落合博満氏に代わる新監督就任を要請し、受諾してもらった。「高木さんの思い通りのスタッフでやって欲しかった」。フロントマンとして2度目の監督を全面バックアップした。13年オフ、高木氏が任期満了で退任した時にかけられた言葉が、今も忘れられないという。「最後にいい夢を見せてもらった。ありがとう」。

現役時代も高木氏と苦楽をともにした。「ロッカーで毎日、バットやスパイクを磨いていたね。当時のスパイクは革製で、今のように光っていない。遠くから光って見えるように磨いていた。当時の監督は初代ミスタードラゴンズの西沢道夫さん。おしゃれな人だったから、2代目として影響を受けたんでしょうね」。無口で「むっつり右門」と呼ばれることもあったが、普段は白と黒を基調にした服を好んで着るダンディーな一面もあったという。

追悼試合当日は、東京6大学秋季リーグ戦の真っ最中。「ナゴヤドームには行けないね」。東京から故人をしのんだ。【伊東大介】

◆井手峻(いで・たかし) 1944年(昭19)2月13日生まれ。新宿から東大へ。66年2次ドラフトで中日3位指名を受け入団。67年投手で1勝4敗。70年に外野手に転向し、76年まで通算359試合、64打数12安打、1本塁打、2打点。現役引退後は中日で外野守備走塁コーチ、2軍監督などを歴任。フロントにも入り、92年からの第1次高木政権下でコーチに復帰。95年からフロントに復帰し球団代表などを務めた。現役時代は右投げ右打ち。昨年12月に母校東大の野球部監督に就任。