日刊スポーツ評論家陣がリレー形式で提言する「V奪回のシナリオ」の第7回は、大石大二郎氏(62)が得点力向上への課題3カ条を提言した。速球対策や助っ人野手、大山の来季について熱く語った。

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守備力の向上は前提の上で、攻撃面について提言したい。

近年のタイガースの打撃を見ていると、全体的に速いストレートや甘いボールの打ち損じが目立つ。積極的にスイングする姿勢は見えるが、狙い球を絞り切れていない印象がある。最近では、特に中日大野雄の直球をとらえられない。速球派の投手と対戦する時は、最も速い球にタイミングを合わせるのが大事だ。しかし同じ直球でもコースによって、打つポイントが違う。インハイだと前になるし、アウトローは捕手寄りになる。タイミングを合わせようとしても、ゾーン全体を漠然と狙っていては打てない。

どこを狙うのか。ストライクゾーンを9分割し、内角を高めから低めに<1><2><3>、真ん中高めから<4><5><6>、外角高めから<7><8><9>と分ける。打者というのは、浅いカウントでは<1>や<7>の直球にタイミングを合わせる傾向にある。<1>に合わせておけば、そこよりも甘い<2><4><5>に十分、対応できる。<1>を待って、<9>にボールが来れば、見逃すのが普通だ。<9>に思わずバットを出してしまう時は、狙い球が絞れていないということだ。

誤解してほしくないのは、何もインハイの難しい球を打て、ということではない。150キロ前後の速球を投げこむ投手は、配球の50%以上が直球になる。好投手が<1>に投げれば、簡単には打てないが、コースが甘くなることは絶対にある。<1>を頭に置きながら、<2><4><5>のような甘いコースを打ち損じないことが重要だ。タイガースの打者が直球を初球からバチンと打つ場面は少なかった。ボールの待ち方に課題がある。そして2ストライクに追い込まれた時は、同じ<1>を待つのでも、センターから逆方向を意識すれば、変化球に対応できる。引っ張ろうとすれば、空振りが多くなる。

次に外国人補強への考え方を提言したい。サンズ、マルテの今年の結果では、拙い守備を大目に見られる数字ではない。結局、どういう外国人がほしいのか。保険としておいておくのはいいが、30本以上を打てる助っ人を取っ替え引っ替えでも探すべきだ。サンズは9月下旬にセーフティーを試みたが、あれにはガッカリした。メンタルが弱いのか、そこから打率も得点圏打率も落とした。日本には金稼ぎにきたのだから、バントなどしないという気持ちの強さがほしい。新たな補強に動いているとは思うが、この2人に頼るのは次元が低い。

最後のポイントとして挙げたいのが、大山だ。今季は打率2割8分8厘、28本塁打の成績を残した。いい打撃を見せたが、その半面、もろさも目立った。この安定感のなさに、不安を覚える。陽川や中谷にも言えるが、引っ張り過ぎだ。他球団のいい打者が安定して成績を残せるのは、逆方向を意識して打てるからだ。逆方向に狙って打てる技術を身につけてほしい。ライトの定位置から、ポール際にかけては、右打者でも本塁打が打てるゾーンだ。引っ張れば強く振れると思っているかもしれないが、ボールを飛ばすのにそんなに力はいらない。引っ張ろうとすると、体の軸が崩れる。コンパクトで強いスイングを心がけて欲しい。逆方向に本塁打を打てれば、殻をもう1つ破ることができるだろう。