20年8月2日、夏季高校野球島根大会準決勝第1試合から、ロッテの選手が2人、誕生した。育成ドラフト1位・谷川唯人捕手(18=立正大淞南)と同3位・山本大斗外野手(18=開星)だ。

山本は、谷川の存在について「夏の大会で知りました」と回想する。同大会には32校が出場したが、面識はなかった。意外にも、対戦経験もなかった。試合前のシートノックで気になった。「肩が強い印象がありましたね。あとストッピングがうまいなと」。

1回表1死二塁、開星の3番山本が第1打席を迎えた。マスクをかぶる谷川は警戒していた。試合前までで同大会5割4分5厘。「どのコースに対しても強く仕掛けられる打者なので、そういう意味では真ん中付近に来た球は持っていかれるという印象でした」。

初球、外の直球で見逃しストライク。2球目、高く抜けたボール気味のスライダーを空振りで2ストライク。3球目、谷川は外角ギリギリに構えた。右腕の球がミットにぴたりと吸い込まれ、見逃しで3球三振。狙い通りだった。

試合は延長10回、タイブレークの末に立正大淞南がサヨナラ勝ちした。他県同様、新型コロナ対策で試合後の握手はなかった。それでも忘れられない熱い試合だ。「中盤は負けてたんですけど、最後の最後でひっくり返して、延長で勝ち抜いた。一番燃えた試合です」。勝った谷川は今でも誇りにしている。

夏の対戦相手とチームメートになったまさかのドラフト会議を経て、入団会見で再会した。ようやく話せた。山本は鳥取・米子市、谷川は島根・安来市の出身。県は違うが隣町だ。「住んでいるところもすごく近いので、すごく頼もしいです」と山本は喜ぶ。地元を、山陰を盛り上げたい-。ともにそう願う。

育成選手として、石垣島キャンプは2軍で体作りに励む。谷川が山本の打撃に一目置くのに対し、山本は「谷川はしゃべれるので…しゃべれるところをマネしたいです」と照れ笑い。互いをライバルと認め、夢へと高め合う。2人がいつかともにロッテを背負う名選手になれば、県立浜山公園野球場での一戦は伝説になる。【金子真仁】

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