広島高卒2年目の玉村昇悟投手(20)が、“5度目の正直”で悲願のプロ初勝利をつかみとった。1軍デビューから5試合目の先発となるDeNA戦で、自己最長の7回を投げ、自身初の10奪三振で6安打2失点と力投した。自己最多115球の熱投で、交流戦18試合で勝利のなかった先発に19試合ぶりの勝ち星をもたらした。チームの最下位脱出に大きく貢献した。

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初めてのお立ち台で、玉村の喜びの声がドーム内に響き渡った。「やっと勝ててよかったです」。最速147キロの直球とスライダー、チェンジアップを巧みに操り、DeNA打線を手玉に取り、プロ最長7回を投げきった。計10三振を奪い、6安打2四球2失点。先発5試合目で待望のプロ初勝利を手にした。

デビュー戦の借りを返した。プロ初登板初先発のDeNA戦では、オースティン、ソトに1発を浴びるなどして、5回5失点で敗戦。「前回本塁打を打たれたので、丁寧にいこうと」。オースティンに1安打を許したが、緩急を使った投球でそれぞれ2三振ずつ奪い、リベンジを果たした。

自然豊かな福井・越前で生まれ育った。高校は実家の近所にある丹生へ入学。学校が丘の上にあることから、学校周辺に長さ、角度の違う坂が3コース存在するといい、その坂で通称「坂ラン」と呼ばれるランメニューを毎日のように行い、強固な足腰を築き上げた。「下半身と精神面が鍛えられました」。高3年時には主将、エースとして無名校を夏の甲子園をかけた福井大会の決勝まで導いた。大会5試合で「52奪三振」の新記録を打ち立て、「越前のドクターK」の異名を持った。脚光を浴び、小学生の頃から抱いていたプロ入りの夢をかなえた。

プロ1年目は大きな壁にぶつかった。強化指定選手だった左腕は、実戦よりも体作りを優先し、公式戦デビューは昨年11月1日のウエスタン・リーグ中日戦。6回のマウンドに上がり、先頭からまさかの6連打を浴び4失点。1死も取ることができず、降板した。「ボコボコにされて悔しかった。力だけで勝負するのはダメだと思った」。実戦を重ね、経験を積み、投球術を磨いていた。「怖さはずっとある。だから丁寧というか、慎重に投げられているのかなと思います」。

プロ初勝利と試合を振り出しに戻した2回のプロ初タイムリーの2つの記念球は福井の実家に送る。「もっともっと勝てるように、いいゲームを作って、勝ちを多く取っていきたいです」。20歳の左腕が、苦戦が続くチームに明るい光りをもたらした。【古財稜明】

 

▽広島佐々岡監督(玉村について)「(リーグ戦再開後の)初戦でしっかりと試合を作ってくれ、7回まで粘り強く投げてくれたのが大きかった。期待をしている中で、いい投球をしてくれました」