勝利を見つめて、仲間を信じて、懸命に腕を振り続けた。オリックス山本由伸投手(23)が、9回3安打1失点で完投勝利を挙げ、高卒5年目で自身初の2桁勝利を記録した。

「接戦を勝ち切れて、本当にうれしい。集中して投げられたので、最後までいいボールだった」

絶大な信頼がある。同点の8回攻撃中。中嶋監督からも、高山投手コーチからも声かけはなかった。指揮官が「(山本が)試合前に安心して見ててくださいと。こちらが何も言わないということはイコール(続投)」と説明するように、9回のマウンドに向かった。2番源田、森、中村を3者凡退に仕留めると、ほえた。今季最多126球の熱投でナインも鼓舞。最終回にサヨナラ勝ちを呼び込み、歓喜のシャワーを浴びた。「T(-岡田)さんが見えて、アクエリアスがかかってきました…」と劇的勝利に頬を緩めた。

17日に23歳を迎えてからの初マウンド。歳を重ねても、輝く目の色は変わらない。ちょうど4年前。高卒新人だった山本は、心臓をバクバクさせながらも笑顔を保った。17年8月20日のロッテ戦(京セラドーム大阪)でプロ初登板初先発。5回1失点とデビューを飾った記念すべき日に、野球の神様は再びほほ笑んだ。

これで貯金11は今季最多タイ。2位楽天に3ゲーム差をつけた。中嶋監督は「1つ1つ貯金を重ねていきたい」と力を込める。

山本は「みんな見たいと言ってくれた」と東京五輪の金メダルを大阪・舞洲にも持っていき育成選手らにも、実物を披露した。「優勝に近づいて行けたら」。かなえるべき夢へ-。全員で突き進む。【真柴健】