ヤクルトの“切り込み隊長”塩見泰隆外野手(28)が史上71人目、76度目のサイクル安打を達成した。1回、右前打で勢いに乗ると、3回の第2打席に三塁打。4回の第3打席では2試合連発となる右翼への12号3ランを放った。リーチをかけて迎えた6回の第4打席、左翼線への二塁打で一発回答。8月25日DeNA牧以来の快挙となった。試合は悔しい引き分けに終わったが、虎の背中を追うチームを塩見がけん引する。

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悔しかった。プロ4年目で人生初の記録を打ち立てても、塩見の口から最初に出た言葉は反省だった。「後の2打席はチャンスで打てなかった」。6回までにサイクル安打も、7回2死二塁の第5打席は見逃し三振。同点で迎えた9回2死一、二塁では、カウント1-2から外角低めの144キロカットボールに思わず手が出た。バットを止めようとしたが、ハーフスイングを取られ、空振り三振。表情をゆがめながら、打席付近で立ち尽くした。

それでも4安打3打点の活躍だ。「相当うれしかった」と記録達成を素直に喜んだ。第4打席、左翼線への二塁打以外はすべて逆方向。前日に放った自身初の満塁本塁打も右中間席へ突き刺した。「振り遅れてるだけじゃないですか」と遠慮がちに笑うが、ツバメが誇る代打の神様のアドバイスがあった。

今季1番打者として定着したが、ここ数試合は不調で先発を外れることもあった。川端から「後ろのバットの軌道が大きくなっている」と助言を受けて、ハッとした。癖が気がつかないうちに大きくなっていた。ティー打撃から改善に取り組んだ。正面からの球を打ち、速いトスから上がる球を打ってコンパクトに打つ意識付け。その後、緩い球を打って体に染み込ませた。首位打者経験のあるバットマンの下、フォームの修正したことで、力強い打球が戻ってきた。

チームの得点時には塩見が発端の「フェラーリのポーズ」が浸透している。サンタナもヒゲに手をあてるポーズをするなど、ベンチは明るい。4回の本塁打でも、両手を招き猫のように掲げながらピョンピョンと跳ねた。「明るくプレーすることによって、みんな前向きになって、結果も良い方向に向かっていく」。3位巨人に連勝はならなかったが、首位阪神を2・5差で追う。逆転Vへ、切り込み隊長が流れを呼び込む。【湯本勝大】

◆フェラーリのポーズ 今季のヤクルトが得点時にハイタッチの代わりに行っているもので、両拳を掲げ、立ち上がる馬のようなポーズをする。シーズン序盤に塩見が始めて浸透。首脳陣も含め全員でやるのがお決まりだ。塩見は「僕はフェラーリだと思っているんですけど(川端)慎吾さんはナポレオンだと。馬ポーズでもありますし…」と話しており、名称は未確定だ。