東農大北海道が函館大を7-0の7回コールドで下し9勝目を挙げ、1試合を残し2季連続32度目の優勝を飾った。初回に3点先制すると、6回2死満塁で主砲の古間木大登捕手(4年=遠軽)が走者一掃の左越え適時三塁打を放ち、突き放した。14日に元部員の佐々木葵さん(享年21=金足農)が病死。天国へ旅立った仲間に、全員で手向けの勝利を届けた。同大は明治神宮大会出場をかけ、札幌6大学野球優勝校との代表決定戦(10月15日開幕、札幌円山)に臨む。

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悲しみを乗り越え、東農大北海道が2季連続のタイトルをつかみ取った。優勝後、選手全員でベンチ前に背番号51番のユニホームを掲げ、空に向かい叫んだ。「葵、やったぞ!」。1回二、三塁で先制の左前2点適時打を放った守屋秀明左翼手(4年=暁星国際)は「葵が僕に打たせてくれた」と目を潤ませた。

投手だった佐々木さんは昨夏、右足に骨肉腫がみつかり足を切断。9月から実家の秋田の病院に入院した。治療のため復学が難しくなり大学を退学し野球部も退部した。その後も三垣勝巳監督(41)は佐々木さんの病状を逐一確認し選手に伝えてきたが、リーグ優勝5日前の14日、帰らぬ人となった。

捕手として同学年の佐々木さんのボールを受けていた古間木は「球が速く力強かった。亡くなったと聞いたときはショックだった」。180センチを超える大型右腕で、昨夏まで150キロ近い速球を投げており、三垣監督も「大きな可能性を秘めた選手だった。病気がなければ」と悔やんだ。

この日は試合前に全員で黙とう。三垣監督は「野球をやれることがすごいことなんだというのを忘れるな」とカツを入れ、全員一丸で勝利をつかみにいった。古間木は6回2死満塁から走者一掃の豪快な中越え三塁打を放ち「葵は頑張った。俺たちも負けないように頑張ろうという思いだった」と振り返った。

コロナ禍の影響で出場辞退校が相次ぎ、最後は実質3校での戦いとなった。練習試合もできないため週1回、4組に分け紅白戦を行い、成績次第で下位チームに降格させるなど緊迫感を持たせる練習で、士気を維持してきた。6月の全日本大学選手権は準々決勝で上武大に3-11と大敗しており、古間木は「どこまで成長したか全国で確かめたい。そのためにまず代表決定戦に勝つ」。次は神宮で再び躍動する姿を、佐々木さんに届ける。【永野高輔】