強心臓のルーキーが連敗を止めた。阪神伊藤将司投手(25)が7回6安打2失点の好投で、チームを救う8勝目を挙げた。「自分の中では意識せず、その中で連敗をストップできたことはよかったと思います」。会心の笑顔がはじけた。

球場がどよめいても、マウンドの左腕は冷静だった。6回連打を浴び、2死一、二塁で迎えたのは4番ビシエド。カウント2-2、内角への直球を投じた後、外のツーシームに引っかけさせた。力ない投ゴロに仕留めると、表情一つ変えずにベンチへ向かった。

どんな時も物おじしないマイペースさは、伊藤将の魅力だ。グラブに入れている「飛ぶぞ!」の文字は、ABCテレビの人気バラエティー「相席食堂」内で、元プロレスラーの長州力が使って流行した言葉。グラブには座右の銘など、こだわりの言葉を入れる選手が多いが…。「シンプルにそのシーンが面白かったので、入れました」とあっけらかんと話す。次は同じく長州力が言っていた「お前形変えてしまうぞ」の言葉を入れようともくろむ。気負わない姿勢も、プロで戦う武器になっている。

開幕から先発ローテを守り続け、球団新人左腕では86年遠山以来の8勝目をつかんだ。ここ3試合は白星に恵まれなかったが、この日はクイックも交えて相手を翻弄(ほんろう)。横浜高の先輩福田に2本塁打を許したが、最少失点で粘った。矢野監督も工夫をこらす姿に目を細める。「あいつもエリート街道というか、いい高校や大学や社会人でやってきて、そういう経験というものがいい意味で変化していく。相手が研究してくる中をどうしていくかをやっている証し」。

この日は選手全員が懐メロで登場。伊藤将は、郷ひろみがカバーし有名な「リヴィン・ラ・ヴィダ・ロカ」と、打席ではTRF「EZ DO DANCE」を選曲。理由を聞かれ「なんとなくです、これいいなと思って」と感性のままに答えた。リーグ優勝をかけた戦いは残りわずか。「ここまできたので、最後まで投げ抜きたいと思います」。自然体のまま頂上まで駆け抜ける。【磯綾乃】

▼阪神の新人伊藤将が8勝目を挙げた。阪神のドラフト新人としては13年の藤浪10勝以来8年ぶり。左腕では67年江夏12勝、86年遠山8勝に次いで35年ぶり3人目。