盟友にささげた。広島大瀬良大地投手(30)が、6回2失点(自責1)で9勝目を挙げた。同学年で高校時代には同じ長崎県でしのぎを削った今村猛投手(30)がこの日、球団から戦力外通告を受けた。「非常に残念というか、さみしい気持ちだった。勝ちたいなと思ってマウンドに上がりました」。

プレーボール前、マウンドに上がる大瀬良の背中を押したのは、プロ1年目の14年途中から登場曲として使用する「大地 ~炎のナンバー~」(松前香帆)ではなく、今村の登場曲「starting over」(三代目 J SOUL BROTHERS)だった。

「特別な思いが彼にはある。いろんな思いがあった中で今日は使わせてもらいたいなと思って使わせてもらいました」

ただ、投球は本調子でなかった。2回以降は毎回走者を出す苦しい投球。4回には3安打を浴び、先制を許した。それでも、打線の援護を背に、そして盟友との絆を胸に踏ん張った。6回まで106球。何とか粘って試合をつくり、はなむけの勝利となった。

出身地だけでなく、今村とは共通点が多い。顔がカピバラに似ていることから、「カピバラ3兄弟」の異名を持ち、広島に入団した順番に長男今村、次男大瀬良、三男一岡とされていた。口数は少なく、穏やかで気遣いができる優しい性格。言葉がなくても、なぜか気持ちが通じ合う仲だった。

「中学3年の時に彼の存在を知って、すごいなと思いながら、そこから彼の背中を追いかけるようになった。彼は高校からプロに入って、僕は大学に行って、頑張っている姿を見ながら、一緒の舞台でやりたいなと思ってやってきて、同じチームになって。いろんな時間を共有して、今日に至る。彼が今日まで残してきた功績は、まだまだ僕には到底及ばないと思う。これからも、彼の背中を追いかけていきたい。彼がいたから今の僕がある。まだまだ彼の背中を追いかけて頑張りたい」

涙はグッとこらえ、さらなる成長を胸に誓った。今季、残り2試合の登板を予定。2年ぶりの2桁勝利を目指し、うっすら背中が見えてきた3位巨人を追走する。【前原淳】

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