来季4年目を迎える矢野阪神が、17年ぶりのリーグ制覇に必要なものは何か? 日刊スポーツ評論家陣が提言する「背水矢野虎 来季Vへの具体的方法論」。第4回は98年横浜日本一監督の権藤博氏(82)で、首脳陣に佐藤輝明内野手(22)をはじめとする起用の根拠と一貫性が必要とし、4年連続両リーグ最多失策改善へ中日の練習を見習うべきと本気の改革を求めた。【取材・構成=松井清員】

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阪神は2位ヤクルトを最大7ゲームも離しながら、優勝できなかった。確かにヤクルトの追い上げは立派だったけど、あそこまでいったら勝ち切らないと。優勝しないと。あれだけの戦力、しっかりした投手力を持ちながら、本当にもったいないシーズンでしたね。

起用の根拠、一貫性がなかったことが競り負けた要因でしょう。巨人とのクライマックスシリーズを見ても、第1戦で大山、佐藤輝、梅野を外したかと思えば、あとがなくなった第2戦は3人を使った。あのレベルのレギュラーは最初から使って当然の選手。シーズンは彼ら主力の活躍で勝ってきたわけでしょう? 第1戦のピストル打線がダメで、第2戦は大砲打線に替えたのだろうけど、最後まで根拠と一貫性がなかった。残念ながら阪神には、これで1年間戦うんだというスタイルが見えなかった。

中でも佐藤輝を使ったり外したり、彼の起用法が全てを象徴していましたね。あれだけ振って飛ばせる選手は10年、20年いない。連続無安打記録をつくろうが、三振記録をつくろうが、当たれば飛ぶのが投手は一番いやなんです。少々調子が悪くても、村上を高卒2年目の19年から全試合使って、日本一の4番に育てたヤクルトとは対照的。私は守備も大学時代から守っていた三塁をやらせるべきと言ったけど、新人なのだから外野と決めたら、外野1本で勝負させないと。あっちやって、こっちやってでは、本人もチームもフラフラするだけですよ。

4年連続まで伸びた両リーグワースト失策の課題の守備も、2月のキャンプから練習方法に改善が見られなかった。ありきたりの普通のノックだから、ありきたりの守備になる。その点、中日はすごい。特に今、楽天にいる奈良原コーチがいた17~19年は全部、試合を想定したノック。キャンプも公式戦に入った試合前も。おかげでビシエドなんて、16年の入団1年目は見ていられないぐらい下手だったのに、20年はゴールデングラブ賞ですから。練習への取り組みがいかに大事かが分かる、いい例ですよ。

中日ではそのスタイルが受け継がれていて、甲子園の土のグラウンドで試合をしても、みんな簡単にさばくじゃないですか。自分の庭のはずの阪神の選手とは対照的に。阪神は中日の練習をしっかり見て、勉強した方がいい。本気で取り組まないと、来年も同じ繰り返しになってしまいますよ。