今季限りでの退任を明かした阪神矢野燿大監督(53)と、元広島3連覇監督の緒方孝市氏(53=日刊スポーツ評論家)の「同学年対談」が2年連続でキャンプ地の沖縄・宜野座で実現。実際に戦う監督だけに分かる気持ち、退団した守護神スアレスの穴をどうするかなど、本音でのトークを展開した。【取材・構成=石橋隆雄、編集委員・高原寿夫】

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緒方 去年、話したとき「巨人に勝つ」ってオレンジ色のサングラスをしてたけど有言実行したよな(※)。

矢野 TG戦は先輩らがつくってくれた伝統あるもの。巨人に勝ったから優勝ではないけど、意識は高められるよね。だから今年も意識して戦ってはいくけど、正直、今年は(ウチは)戦力ダウンや。

緒方 スアレスか。

矢野 そこよね。でも野手が1点取ることで、中継ぎ投手がひとり頑張ることで、その穴が埋まる可能性もある。そういうイメージで、チームの競争をどれだけ激しくシーズンを通してやっていけるかに、今年の優勝はかかってる。

緒方 競争は常に必要やからね。

矢野 例えば4番で大山と佐藤輝。マルテはいつでもできると思うけど、やっぱり生え抜きの、日本人の4番を、緒方は鈴木誠也をつくったけど、それがファンのためでもあるし、チームのためでもあるから。

緒方 確かにスアレスの穴は大きいけど監督としたら総合力で勝たんと。失点は増えるかもしれないけれど、じゃあ、もう1点多く取って、守備もしていこうというか総合力の戦い。今年は延長も12回でしょ。

矢野 そうそう。

緒方 だから先発がちょっと我慢したりとか、中継ぎとかを厚くしたりとかも必要になってくる。監督4年目の試合運びとか試合の流れとか。今年はそういうところを見ていきたい。

矢野 ありがたい。うれしい。うれしい。ありがとう。だから、ほんまに「イチにカケル」や。今年1年にオレもかける。

緒方 これは誰が考えたの?

矢野 ウチのスローガンって、いつも全員でミーティングするのよ。裏方さんも選手もスタッフも全員入ってもらって。

緒方 そうなんや。ええやん。広島は上の方から来てびっくりする(笑い)。でもイチ、優勝を狙うのは監督の仕事、責任や。

矢野 もちろん。それは分かる。これまでずっと「優勝します」って言ってるし「日本一になってやめる」って言ってるし。当たり前やけどやめるからって手を抜くことは一切ないし、やめるからこそ覚悟を決めた1年をやって、優勝してやめる。日本一になってやめる。それを描いて言ってるんで。大丈夫です。

(※)昨年のこの対談で矢野監督はツルがオレンジ色のサングラスを着用。キャンプ初日にも同じものを付けていたと緒方氏に明かした。「打倒ジャイアンツを意識した」という理由に、緒方氏も「こんなことを言うのは難しいよ」と笑顔で評価していた。

【矢野監督×緒方孝市氏対談1】

◆矢野監督の退任表明 キャンプイン前日の1月31日、沖縄・恩納村内のホテルで全体ミーティングを行った際、ナインに今季限りで退任する意向を伝えた。その後の報道陣にも自ら切り出し「今シーズンをもって監督は退任しようと思っている」と明かした。代表取材に応じた主将の坂本も「ビックリというのが一番」とナインも驚いたようす。シーズン前、しかもキャンプイン前日の退任表明は長いプロ野球の歴史でも異例で、賛否両論が巻き起こっている。