オリックスは15日、能見篤史投手兼任コーチ(43)の今季限りでの現役引退を発表した。16日に京セラドーム大阪で会見を開く。プロ入り以来16年間を阪神で過ごし、5度の2桁勝利などエースとして活躍。21年にオリックスに移籍し、コーチと選手の二刀流で25年ぶりのリーグ優勝に貢献した。球団は104勝を挙げた名サウスポーの指導力を高く評価。来季もコーチ契約のオファーをしている。

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虎の元エースは静かに引退を決断していた。夏場に球団幹部に意思を伝えた。発表があったこの日も淡々としていた。同僚には報告済みで、自然と練習の輪に加わった。先発する山岡のキャッチボール相手になり、100メートル近い大遠投にも付き合った。若手の横に立ってじっくりと話をする姿は、これまで変わらなかった。

努力で104勝を積み重ねた。鳥取城北時代は井川慶(元阪神)、川口知哉(元オリックス)と左腕三羽がらすと評されたが、3人の中では最も目立たない存在だった。25歳でのプロ入り時も細身が話題になった。食が細く、体重は70キロ未満、ウエスト70センチ。マウンドを降りれば、頼りない雰囲気が漂う「ドラ1」だった。

生命線であるスピンの利いた直球とフォークを地道に磨き上げた。5年目の09年に13勝でようやくブレーク。その後も「エース」と呼ばれることを嫌い、向上心を持ち続けた。

昨年のオリックス移籍後は新境地が待っていた。兼任コーチとして田嶋、宮城の両左腕を筆頭に投手陣のサポート。優勝の陰の立役者だった。今季は6月を最後に4試合の救援登板。引き際は自ら悟った。

球団は来季もコーチ契約を要請している。福良GMは「彼とはいろいろと話をしている」と明かした。横田球団本部長は「若手への影響は計り知れない。みんなが能見の姿を見ている。うちにとってプラスしかない」と強調した。引退セレモニーも用意する。

16日に会見を開き、胸中を語る。阪神、オリックスで関西のプロ野球を盛り上げてきた名サウスポーがマウンドに別れを告げる。【柏原誠】

◆能見篤史(のうみ・あつし)1979年(昭54)5月28日、兵庫県生まれ。鳥取城北-大阪ガスを経て04年ドラフト自由枠で阪神入団。12年に最多奪三振。14年には5試合連続2桁奪三振のセ・リーグ新記録をマーク。13年WBC日本代表。20年オフに阪神を退団し、兼任コーチでオリックス移籍。オールスター出場2度。阪神での通算1496奪三振は球団歴代4位。阪神とオリックスの2球団で最年長ホールドとセーブの記録を保持。180センチ、74キロ。左投げ左打ち。

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