ヤクルト嶋基宏捕手(37)が28日、現役引退を表明した。実働16年のプロ野球人生の初期に、闘志に火をつけてくれる出来事があった。

楽天入団2年目の2008年(平20)1月、嶋はロッテ渡辺俊介らと国学大卒のプロらの合同自主トレに参加していた。場所はグアム。そのグループ以外にもいくつかの集団が自主トレ中で、ニアミスは日常茶飯事だった。

あるとき、筋トレルームに入った瞬間、巨人阿部慎之助の声が聞こえてきてしまった。「身長みたいな打率じゃダメだろ」。阿部が誰に向かって話したことかはわからないが、嶋には響く言葉だった。1年目の成績は1割8分3厘。身長の179センチと大差なかった。

練習後、グアムの浜辺でシーフードを食べたあと、トラックの荷台に何人かで乗せてもらい、宿舎まで帰った。カエルの鳴き声が響く道すがら「絶対打てるようになってやる」と誓った。10年には3割1分5厘の高打率も記録。11年には震災にめげない底力もみせた。振り返れば、有言実行の野球人生だった。【元プロ野球担当・竹内智信】