球場に乾いた打球音が響いた。1点を追う4回1死一塁。相手先発山下の150キロを超える“剛球”に打線は2安打と沈黙していた。悪い流れを切り裂いたのは大山悠輔内野手のひと振りだった。カウント2-1から低め直球を強振。「相手投手が力強いボールを投げ込んできていたので、そこに振り負けないようにしっかりスイングすることを心がけた」。歓声とともに打球は左中間フェンスを越え、一時勝ち越しとなる2ラン。左翼ビジター席の虎党をわかせた。

ベンチに帰っても、表情は引き締まっていた。オープン戦15試合、60打席目で生まれた初アーチ。今春の実戦では22試合、88打席目の1発だ。だが本塁打直後にも「これ以降の打席も1打席1打席を大事にしていきたい」と、すぐに次の打席を見据えた。

今季、岡田監督からは「4番一塁」での固定起用を明言される中、前試合までのオープン戦打率は1割4分9厘。3試合で12打席中、内野安打1本のみと苦しい結果が続いていた。12日の巨人戦では「1番DH」で出場するなど“荒療治”も敢行。だが、昨季チーム最多23本塁打87打点を記録した主砲の完全復調は遠かった。

低調が続く主砲に対し、前日23日には指揮官から「シーズンで爆発するかもわからへんし。でも調子を上げていってくれた方が、こっちは安心感があるということや」とゲキを飛ばしていた。すぐさま期待に応え、まさに「待望の1発」。試合後には「まあ、今年一番ええ当たりやろ」と目を細めたが、本来の状態には「そら、まだまだやろ」と、求めるレベルはさらに高い。

31日のDeNAとの開幕戦まで、残すオープン戦は2試合。「しっかり反省して、明日もう2試合しかないので、頑張ります」。18年ぶりの「アレ」に向け、いよいよ主砲が目を覚ました。【波部俊之介】

▼大山にとっては、オープン戦自身“最遅”の1合となった。過去6年のうち、オープン戦で本塁打を記録したのは17、22年を除く4シーズン。これまで最も遅かったのは、18年の14試合目、57打席目だった。

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