現役ドラフトでソフトバンクから阪神に移籍した大竹耕太郎投手(27)が、今季初先発したヤクルト戦(甲子園)で6回3安打無失点と好投し、自身3年ぶりの白星を手にした。チームの3連敗を阻止した1勝は昨オフ移籍組、現役ドラフト組で一番乗りの白星となった。早大の先輩でもある岡田彰布監督(65)にタテジマ5304日ぶりの甲子園星もプレゼント。掘り出し物の左腕が18年ぶりの「アレ(=優勝)」への強力な新戦力となりそうだ。

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大竹にとって3年ぶりの白星は、第1回を終えたばかりの現役ドラフトにとっても価値ある1勝となった。「いい意味で先駆け、前例になった。この制度自体が選手にとってポジティブな機会というイメージがつくように活躍していけたら」と充実感を漂わせた。

緩急が持ち味の技巧派左腕だが、序盤は直球で押した。4番村上には内角直球で詰まらせ、初回の第1打席は右飛、4回の第2打席はバットを折って二ゴロ。ツバメ打線に二塁も踏ませなかった。「変化球を生かすためにも直球を磨け」。そう教わり続けてきた早大の先輩、ソフトバンク和田に恩返しの白星だ。

初めて0勝に終わったプロ4年目のオフに門をたたき、22年1月の自主トレに初参加した。「大学も一緒だし、それまでは、かしこまり過ぎちゃうところがあった。でも『このままじゃ、もう終わっちゃうな』という感覚もすごくあった」。勇気を振り絞った。

当時の大竹について、和田は「頭がいい子なのでいろんなことを勉強しよう、覚えようとしていたけど、僕から見れば迷走していた。『枝葉』ばかりで、体幹の芯というか『幹』になるものがまだまだなかった」と振り返る。もがくほど即効性がほしくて小手先だけに走っていた後輩に、もう1度投手に必要な体幹、基礎を鍛えるよう伝えた。阪神移籍後も電話をすればアドバイスをくれる大先輩は、42歳になった今も先発ローテの一角を担う立場。後輩も負けてはいられない。

プロ入りは17年育成ドラフト4位。「東京6大学から育成でプロに行くの? っていう世間体があった」。周囲からは厳しい声もあった中、当時2例目となる早大からの育成入団で道を切り開いてきた。初めての関西生活も「おいしいお店、もう見つけましたよ」と、すっかりなじんだ様子。阪神タイガースという新天地で、大竹が再び輝き始めた。【石橋隆雄】

▼阪神大竹が移籍後初登板で初勝利。大竹が勝利投手になったのは、ソフトバンク時代の20年10月25日西武戦(ペイペイドーム)以来3年ぶり。このときは先発して5回1失点だった。

<大竹耕太郎(おおたけ・こうたろう)アラカルト>

◆生年月日 1995年(平7)6月29日

◆出身地 熊本県熊本市

◆球歴 済々黌2年夏、3年春に甲子園出場。早大では通算11勝。17年育成ドラフト4位でソフトバンク入団

◆プロ成績 18年に支配下へ昇格し、8月1日西武戦に初先発初勝利。昨オフ、現役ドラフトで阪神移籍。昨季までの通算成績は35試合登板で10勝9敗、防御率4・07

◆好物 宮崎のギョーザ人気店「黒兵衛」にサイン色紙がある。「宮崎に行ったら絶対行きます」

◆合気道 ソフトバンク時代から合気道を練習に取り入れ、バランス感覚を養う。以前まで師範には兵庫から福岡に出張を依頼していたが、引っ越し後は「(師範が)隣の駅に住んでるので継続します」。1月下旬には仲良しのソフトバンク武田と一緒に出稽古

◆サイズ 184センチ、87キロ

▼早大の先輩でもある阪神岡田監督は大竹の勝利を喜んだ。「ほんと、ナイスピッチングだった。無四球もそうだけど制球がいい」と絶賛した。早大時代から存在は知っていた。「初めての現役ドラフトで獲得したけど、キャンプから見ていて当然、このままいけるんじゃないかなという気持ちもあった。今後も使う」。先発ローテの1人として、さらなる期待を寄せた。

■初先発で好リード

今季初スタメンの坂本が起用に応えた。先発大竹ら4投手の持ち味を引き出し、完封リレーに貢献。「風がちょっと強かったので、考えながら、大竹は内角を突いたり、いいところに投げてくれた」と笑顔を見せた。9回最後の打者、内山の飛球は風にあおられてお手玉しながら何とか捕球。「最後、僕が一番(風に)やられそうになりました」と胸をなで下ろしていた。