阪神村上頌樹投手(24)は笑っていた。8回表、自身の打席で代打原口がコールされると、ホッとしたように白い歯を見せた。2年ぶりの1軍先発マウンドで7回まで5奪三振でパーフェクト投球。「目の前だけを考えていた。意識せず、無駄なランナーを出さないと思っていた」と、充実感がにじみ出た。

7回を投げ終えマウンドを降りると交代を告げられた。84球。余力は「少しあった」。ただ、「ほんとに、7回投げ切れたことがよかった」。智弁学園の先輩岡本和は三振を含む2打席無安打に封じ「絶対に打たれたくない気持ちがあった」と胸を張った。

身長175センチ。決して角度があるわけではない。ただ、アマチュア時代から、受けた捕手が「村上の球は伸びが違う」と語る球質を武器に勝負の世界を生きてきた。

「あんな低く糸を引くように投げられるのが理想なんですよね」

目に焼き付けているのは通算224勝のレジェンド左腕、工藤公康が巨人時代に内海哲也と遠投する姿。「肩の高さから決して垂れない。僕もああいう遠投ができるように」。岡本を仕留めた直球も、垂れることなくホップするように捕手坂本のミットに収まった。

岡田監督は「キャッチャーから聞いてもストレートが去年から速くなってるいうのは分かっていた」と直球の威力を評価。「次も先発やらさないといけない」とローテの一角を託すと明言した。プロ1年目は2軍で最多勝、最優秀防御率、勝率1位の投手3冠。昨季は2軍で防御率、勝率の2冠となりながら1軍昇格は1度もなかった男が、チャンスをつかんだ。

8回に同点弾を浴びた同期入団の石井にはベンチで「落ち込まないでください。次は僕が迷惑かけると思うので」と声をかけた。プロ3年目の飛躍へ。決して遠くない未来に初勝利が待っていそうだ。【中野椋】

▽阪神岡田監督(村上の今後について)「これは当然ね、次も先発やらさないと。当たり前やん、そんなの。あんなピッチングして、使えへんことはないわ」

▽阪神安藤1軍投手コーチ(村上について)「(交代は)監督の決断ですし。もうナイスピッチングというだけですよ。ほんとよく投げでくれました。できれば勝たせてやりたかったです」

◆村上頌樹(むらかみ・しょうき)1998年(平10)6月25日生まれ、兵庫県出身。智弁学園では岡本和(現巨人)の2学年下。3年春の甲子園では高松商との決勝で延長11回、自らサヨナラ打を放って優勝。東洋大を経て、20年ドラフト5位で阪神入団。21年5月30日西武戦で1軍デビュー。昨季は1軍登板がなかった。2軍では21年に最多勝、最優秀防御率、勝率1位の3冠。昨季も最優秀防御率、勝率1位。175センチ、80キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸750万円。

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