オリックス田口壮外野守備走塁コーチ(53)が18日、心不全のため90歳で死去していた中西太氏(日刊スポーツ評論家)の訃報を受けて、ロッテ-オリックス戦(ZOZOマリン)の試合前練習後に取材に応じた。

毎年1月には年始のあいさつをかねて電話をしていたが、ここ数年は体調が優れぬ様子を感じていた。「声もそんなに元気じゃないのかなという感じはしてたんですけど。太さんは「大丈夫、まだまだ頑張れるから」ということはおっしゃっていた」。それだけに今回の訃報を聞き「びっくりしました」と驚きを隠せなかった。

オリックス時代にヘッドコーチだった中西氏から指導を受けた。「とにかく選手にいつも寄り添ってくれて、常に元気を与えてくださる方でしたね」。中西氏はノートを手に、選手が打席に立っていい当たりを打てば、ヒットの印を記してくれたという。試合の内容は全て書かれており「『これ見てみ』って言って、近々の試合を全部見せてくれたり」と懐かしそうに振り返った。

「中西さん独自の打率みたいなものがあって、いつも見ながら『調子は悪くないよ』という話はいつもしてくれました」。それでも調子の悪い時には、バットに目やいろいろなマークを書いて「これ書いてるから大丈夫や」と送り出してくれた。

当時教えられた「何苦楚(なにくそ)」という言葉は、コーチになった今でも大切にしている。「僕の中にはずっとある。『何苦楚』という、今の努力は、今の苦労は何のためにあるんだ、将来の礎を築くためのものだと。『何苦楚精神』というのは僕の中にはあるので、それはやっぱり選手には引き継いでいきたい」。名伯楽の教えは次世代へとつないでいく。