6月の第3日曜日は「父の日」。ときに厳しく、そして優しく育ててくれた父との思い出、感謝をプロ野球選手たちが語った。

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西武佐藤龍世内野手(26)は「泣いてましたね。嫌すぎて」と懐かしむ。北海道厚岸町の出身。中学時代は隣町の釧路シニアでプレーし、週5の練習の送迎は父貢さん(50)にしてもらった。帰り道、家の5キロ手前で下ろされた。疲れて助手席で寝ていても。

「昭和の人なんで。スパルタすぎて。走れって」

父はケガをし、プロ野球選手になる夢を断念した。息子に託した。漁やカキ養殖で家族を養った。普段は「めちゃくちゃ優しい」という父も「野球ちゃんとやらなかったら、めっちゃ怒られた」と厳しかった。

「よっしゃ、やったるか」と気持ちが乗って走った夜もある。一方、左足の骨折が完治しないまま、走らされたこともある。「泣きながら走ってましたよ」。海に面した根釧国道に、抑えきれない感情を響かせたことは何度もある。

無理に漁師の後継ぎにさせようとはしなかった。「お父(とう)は好きなようにやれ、のスタイルなんで」。2代にわたる夢をかなえた。「でもプロになっただけじゃ、ねえ」と飛躍を誓う。三塁を守る時、ひざを突いて打球を待つ。父が鍛えてくれた足腰で、プロ野球を戦う。【金子真仁】