オリックスの新星・山下舜平大投手(20)の投球フォームを、阪急ブレーブスで通算284勝を挙げた元中日監督の山田久志氏(74=日刊スポーツ評論家、阪急・オリックスOB会長)が解説します。今季はプロ初登板で開幕投手を務め、無傷の5連勝を飾るなどリーグトップタイの6勝を挙げて大ブレーク。山田氏は独特の“間”に、超一流になる可能性を秘めていると分析しました。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

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山下舜平大を見たのは21年、プロ1年目シーズンの春先だった。福良GM、中嶋監督らと一緒にチェックした“立ち投げ”で感じた第一印象は、バランスの良さだった。まだ卒業を迎えていない高校生とは思えない抜群の素材、近い将来の先発として育てるべきだと意見を述べた。

1軍で芽を出し、高いポテンシャルを発揮しているのは、投手コーチ、スタッフが着実に段階を踏みながら育てた成果といえる。今年2月のキャンプで投球を見たときは、上で通用するレベルに到達したことを確信したものだ。

その投球フォームは全体的に欠点を探すのが難しいほどで、新人時代に感じた素材のまま成長してきた。(3)は佐々木朗(ロッテ)ほどではないが、左足の上がりっぷりから、後ろにそることなく、しっかり右足1本で立っている。

今は主に2つの球種で各打者に対している。球速160キロ近い直球で押し込めるし、大きなタテ軌道のカーブも通用している。数種類の変化球を投げる投手が多い日本では珍しい。そのパワーを生み出しているのは(4)(5)(6)にかけての“間”だ。

体重移動に入っていく(4)から、(5)と(6)にかけてグーッと沈んでいくときの右膝に注目してほしい。舜平大の投球フォームには「ここ」に独特の“間”ができる。速さとカーブのブレーキ、パワーのすべての源がこの一瞬にある。

顔は(4)(5)で重心を残した右膝のラインにある。そこにためた力を前に引っ張りながら踏み込んでいく。歩幅が狭いと右膝が曲がってしまうが、股関節が柔らかいから、(6)(7)(8)と広いステップで着地に向かう。この流れを作っているのも、先ほどの“間”といえる。

上背のあるタイプは上体が高くなりがちだが、どっしりとしている。右腕を下から上げる一連のテークバックは小さく見えるかもしれないが、実際に生で見るとそうでもない。上半身でなく下半身を使って投げているし、フィニッシュの(10)(11)で体が乗り切っている。

そろそろ新たな球種をマスターすべきという意見も出てきそうだ。現在もフォークは投げる。これから覚えるのはカットボール、スライダーになるのかもしれない。ただ個人的にさらに大きく育つには、今は今のまま、やられたときに立ち止まって考えてもいいのではと思う。

佐々木朗のフォームはまだパワーに頼っているが、舜平大は理にかなっている。山本(オリックス)の域にはまだ遠い。今後は最近ありがちの、体を大きくでなく、体を強くすることを心掛けてほしい。

ダルビッシュ(パドレス)、田中(楽天)、大谷(エンゼルス)のような日本を代表するスケールの大きい投手になる可能性を秘めた逸材であるのは間違いない。

▼今季の山下 3月31日西武戦(ベルーナドーム)でプロ初登板で開幕投手を務めた。5回1/3を1失点で白星はつかなかったが、中10日の4月11日楽天戦(楽天モバイル)でプロ初勝利。6月1日広島戦(京セラドーム大阪)まで、オール先発では球団史上初となる開幕から無傷の5連勝を飾った。中10日、中8日、中7日と登板間隔を詰め、現在6勝1敗、防御率1・51。次戦は28日ロッテ戦(京セラドーム大阪)先発が見込まれる。