ソフトバンク石川柊太投手(31)が、史上88人目、通算99度目のノーヒットノーランを達成した。本拠地の西武戦で打者31人に対して3四球1死球を与えただけだった。球団では昨年5月の東浜巨以来4人目で、育成出身では、同僚だった19年の千賀滉大(現メッツ)に次いで2人目の快挙。その千賀から助言をもらい、約3カ月ぶりの4勝目を最高の形で飾った。

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ノーノーまであと1人。9回2死。最終関門で難敵の4番中村と対峙(たいじ)したが、石川に恐怖感はなかった。「相手があって自分。相手がいるから自分を高められて思った以上に投げられたと思います」。初球カットボールで一ゴロに仕留めた。「僕はいつもノーヒットノーランを目指してました。逆に目指さない人っているんですか? それって打たれると思って投げるということになりますよね」。いつも通りの「理論派石川」がいた。

打者31人に127球を投げ、出塁は4四死球による4度だけ。自分でも無安打無得点には気づいていた。「中盤からカットボールもカーブもうまく操れた。野手のみんなも最初は声をかけてくれたのに、途中から全く声をかけてくれなくて、よそよそしくなって」。周りの配慮に、マウンドではクスっと笑ったりもした。

6月、2軍再調整を経験した。真っ先に相談したのは、昨季までの同僚メッツ千賀だった。「勝てない」と言うと、メジャーでもまれる元エースから言われた。「アメリカは気づいたら隣のロッカーの選手がいない。マイナー落ちがざら。日々お隣さんが違う」。先発陣は中4、5日が主流のメジャー。中6日で回る石川は「余計なことは考えてられない」と開き直った。同じ育成出身では千賀以来のノーノー。「千賀がやってない育成出身初の~をもっと作っていきたいです」。

約3カ月ぶりの4勝目は、野球人として偉大な勲章がついてきた。「ウィキペディアに載ることが増えますね。(自分のページに)厚みが出るからうれしいです」。何より逆転優勝を目指す藤本ホークスにとっては弾みのつく快勝だ。「喜んでくれる人がいたらそれでいいです。これで次の登板が悪くて、あの日だけかよってならないように」。苦しむ右腕が、未踏の境地から復活する。【只松憲】

◆石川柊太(いしかわ・しゅうた)1991年(平3)12月27日生まれ、東京都出身。都立校の総合工科から創価大を経て、13年育成ドラフト1位でソフトバンク入団。3年目の16年7月に支配下選手登録。20年に11勝3敗で最多勝、最高勝率。185センチ、90キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸1億5000万円。今年1月に元SKE48の大場美奈との結婚を発表。