悔しいままじゃ終われない。西武の今季111試合目は、柘植世那捕手(26)が切り開いた。

ドームの屋根を仰ぐ展開が続いた。日本ハム上沢に対し、5回まで力ないフライが多く、チーム全体でわずか1安打だった。

6回、8番柘植が先頭で打席に入る。考える。

「まっすぐがいい高さに来るんで。力負けしないように打てればいいんですけど、変化球もいいんで、ちょっと待っちゃったりすると遅れて上がりやすい」

第1打席は変化球を引っかけた。松井稼頭央監督(47)からアドバイスされた。「右狙ったら? もうちょっと冷静に打ち返したら」と。その通り、二塁手の頭を越した。

1番源田の安打で二塁に進み、2死後、3番マキノンの中前打で本塁を狙った。黒田ベースコーチの腕が回った。

「1アウトだったら止めていたけどね」

2死で2ストライク。マキノンが打ち、柘植はいいスタートを切った。捕手がこぼし、先制のホームを踏んだ。

「足は動いてませんでしたけど、セーフになって良かったです」

足が速いほうではない柘植がもぎ取った1点が、直後の渡部の2点適時二塁打につながった。

開幕マスクをかぶったが、右肘のコンディション不良もあり、この日はシーズン63試合目となった6月17日広島戦(マツダスタジアム)以来のスタメンマスク。6月も4試合しかスタメンがなかった。

暑い夏、2軍で懸命に整えながら待ったチャンス。打って、走って、もちろん本職のリードでも平良を引っ張って、勝った。

先発転向した平良とは、公式戦では今季初めてバッテリーを組んだ。「全球種いいので。(打者が)合っている球種だけは選ばないように、っていうところです」。しばらくぶりになったが、オープン戦での経験を生かした。

スタメン数では古賀悠斗捕手(23)に大きく後れを取った。ただ、首脳陣はまだ特定の正捕手を定めていない。松井監督は「今年決まるのか、来年になるのか、それとも…」と長いスパンでの競争を考える。

3連敗中で、さらに5回まで1安打。嫌な流れは柘植が変えた。これで浮かれるわけもない。

「いや、もう、ここからなんで。ここから活躍し続けないと」

そんなこの夜の働きを、松井監督は「今日は非常に落ち着いていたと思うし、これが本来の柘植だと思います」と認めた。【金子真仁】

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