西武中村剛也内野手(40)はサヨナラのヒーローになれなかった。

延長11回2死三塁、ロッテベンチは迷わず、4番中村に申告敬遠を選択した。一塁へ歩き、もちろん二塁封殺を防ぐためにすぐに二塁へと走る(盗塁の記録は付かず)。

今季は守りにつくことはないものの、打つこと走ることの充実ぶりは目立つ。16日には内野安打もあった。松井稼頭央監督(47)も「盛り上がりますよね」とそのプレー1つ1つに脱帽している。

この日、元チームメートの日本ハム木村文紀外野手(35)が現役引退を発表した。会見では中村らへの感謝も口にした。西武在籍時には自主トレをともにした間柄。そんな日に、中村は初回にひと振りで先制適時打。「打てて良かったです」とコメントはいつも通りでも、日々のグラウンドは充実している。

昨オフも源田や柘植、滝沢らベテラン、中堅、若手入り交じっての自主トレに参加した。「なんかいきなり動けるし、あの子たち、すっげぇなと。マネできないなと思ってます」。そう笑いながらもシーズンでは結局、後輩たち以上の打棒で打線の中心にいる。

40歳になった。「節目と思っていないので」と何度か口にした。複数年契約も今年までになる。

成績を見れば、バットをしまうのはまだ先のことだろう。そういうことを、どこまで考えているのか。夏のある日、今後の現役生活への思いを尋ねた。

「あぁ、うーん…何も考えてないですかね。本当に。そういうことへの考えとかが全然出てきてない」

最後は少し笑って話した。今ある立場で全力を尽くしながら己のペースは崩さない。残り30本に迫っている通算500本塁打には「まだまあまあ先の話」と言及する。目が向くのはシーズンオフよりも今、そして来季以降。栗山巧外野手(40)にしてもそうだ。ファンたちは「いつまでプレーしてくれるんだろう?」と気をもむ。

「まぁまぁまぁ」と多くを語らない。それでもプロ23年目を迎える来季への意欲は誰に問われるまでもなく、周囲が騒ぐこともまるで関係なく、ごく当たり前のように中村剛也の中に存在している。

そもそも今年の打撃成績は、若手の多いチームにおいて実に頼もしい数字だ。

「あれ、いま、何本でしたっけ?」

結果はそんなに深く突き詰めない。代名詞の本塁打数は、ちゃんと覚えているようでそうでない時もある。今季はここまで16本。

「あと4本か…20本は打ちたいなぁ」

20日の日本ハム戦(ベルーナドーム)は木村の引退試合にもなる。大事な後輩にはなむけを飛ばしたい。【金子真仁】

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