右翼ポールへ描いたグランドスラムが、危機脱出への最短ルートだった。巨人ベンチ裏でスイングしていた大城卓三捕手(30)が、名前を呼ばれた。1点リードの6回2死満塁の絶好機。代打で打席に入った初球、阪神青柳の内角カットボールを振り抜いた。浜風に戻された打球は、虎党の待つ右翼ポール際へ飛び込む16号は、今季2本目の満塁弾。「奇跡っすね。何で切れなかったのか不思議」と敵地の風を味方につけた。

負ければ自力CS消滅の危機的状況で、一矢報いる1発だった。今季最後の伝統の一戦。優勝の余韻が残る甲子園では今季、10敗と屈辱を味わい続けていた。リードはわずか1点。前夜もその1点を守り切れずにひっくり返されていた。原監督は「非常に難しい選択ではあったんですけど」と、先発マスクをかぶり赤星を無失点投球に導く一方で、2打数無安打の岸田に代えて代打を決断。ベンチ裏では亀井打撃コーチが準備をさせ、それを見た阿部ヘッドから「行きましょう」と後押しを受け、積極采配が功を奏した。

阪神戦は借金12。ただ、この1勝で3位DeNAと3ゲーム差に詰め寄った。23日広島戦をはさんで、24日から敵地横浜で直接対決3連戦が待ち受ける。原監督は「(借金12という)数字としては忘れてはいけない数字になりました。まあしかし、未来永劫(えいごう)巨人阪神戦というのはあるわけですから、しっかり肝に銘じて、つなげていくことが大事なことだと思います」。残り8試合。遠回りはもうしない。攻めの姿勢で突き進む。【小早川宗一郎】

▼大城卓が6回に代打満塁本塁打。今季の巨人では丸も6月8日オリックス戦で代打満塁弾を打っているが、巨人がシーズン2本の代打満塁本塁打は、11年の矢野と長野以来4度目。また、チームの代打本塁打は今季10本目で、84年、03年に記録した11本の球団記録にあと1本とした。

▼巨人の選手が甲子園で満塁本塁打を打ったのは07年ゴンザレス以来で、日本人選手では91年篠塚以来32年ぶり。そのうち代打満塁弾は67年吉田勝、88年篠塚に次いで3人目。

▽巨人原監督(今季の阪神戦は6勝18敗1分けで終え)「数字としてはやっぱり忘れてはいけない数字になった。しかし未来永劫(えいごう)、阪神戦というのはあるわけですから、しっかり肝に銘じて、つなげてということは大事なことだと思います」

▽巨人丸(6回2死一、二塁から先制の左前適時打)「優志(赤星)が無失点で好投していたので、なんとか援護したかった」

【動画】巨人大城卓三の16号グランドスラム!打球は声援に押されスタンドギリギリ飛び込む