ついに楽天がクライマックスシリーズ(CS)圏内に浮上した。10連戦最後の試合の最終9回に代打銀次内野手(35)が今季初安打となる決勝適時打を放った。投げては先発した田中将大投手(34)が7回1失点と試合をつくり、13年日本一の歓喜を知る投打のベテランが負けられない一戦で躍動し、チームは3連勝。シーズン残り9試合で、4月7日以来の3位となった。

ベテランの勝負強さが、土壇場でよみがえった。同点の9回1死満塁で代打起用されたのは、22日に今季初昇格した18年目の銀次だ。「今日、このために(2軍で)練習してきたので」と日本ハム伊藤から、しぶとく左前に落とす決勝適時打を放った。「こうやってヒットが出るとうれしい。まだまだ、やらなきゃいけないなと思います」。たっぷりと日焼けした顔から、思わず笑みがこぼれた。

詰まりながらも野手の間に落とす技ありの一打に見えたが、銀次は「技術も詰まっているかもしれないですけど、あそこは…9割くらい気持ちですね」。伊藤の初球は膝元への144キロカットボール。「めちゃくちゃいいボールだった。1球目を見た瞬間に、正直に言って(打つのは)結構キツいかなと思った」ことで気持ちを強く持った。「ここはもう形じゃない」。思い切り振って2球目のスプリットを捉えてみせた。

じっと2軍で出番を待ち続けた今季、戦う気持ちをキープし続けた言葉がある。「1日を無駄にしないようにやっていこうぜ」。三木2軍監督をはじめ、銀次も含めてファームで1軍を目指して必死にプレーする選手たちの合言葉だ。腐ることなく準備してきた中で、待ちに待った1軍昇格から4日目。待望の今季初安打が貴重な一打となり、2軍での日々が無駄でなかったことを証明した。

シーズン最終盤に銀次を1軍へ呼び戻した石井監督も勝負の一手だった。伊藤から2安打を放っていた炭谷への代打銀次について「(炭谷)銀仁朗は去年から伊藤君にはコンタクトがいいのは分かっていたけど、銀次がいるんで。カードを切らない選択はなかった」と振り返った。岩手出身で、楽天一筋の頼もしいベテランがけん引してロッテを追い抜き、4月以来の単独3位に浮上。残りは9試合。指揮官は「ウチは勝つだけ」、銀次は「野球は本当に何があるか分からない」と前だけを見据えた。【木下大輔】

■田中将、198勝目はお預けも7回1失点

田中将が北海道での“駒苫対決”で復活した。高校の後輩の日本ハム伊藤と初の投げ合いで7回1失点と好投。前回登板で3回途中KOの悔しさを晴らした。通算198勝目はお預けも「今日は絶対に勝ちたい試合でしたし、こうして勝てて、すごく良かったです。またしっかり準備して挑戦していくだけです」。今季は残り9試合で、石井監督は「3回は投げられない」と、大台達成は来季へ持ち越しとなった。