今季限りで現役引退を表明している日本ハム谷内亮太内野手(32)が「7番三塁」でスタメン出場し2回2死三塁で先制の中前適時打を放った。その後も一塁、二塁、遊撃、右翼と5カ所を守り、5回途中で交代した。引退セレモニーでは、ヤクルト時代に手本としていた宮本慎也氏(日刊スポーツ評論家)のノックを受けラスト守備を堪能。「こんな幸せな日はない」と、笑顔でプロ生活を締めくくった。

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最高に緊張する瞬間が、最後に待っていた。引退セレモニーの終盤に「ラスト守備で遊撃に入ってもらいます」と場内アナウンス。何が起こるのか。谷内は動揺した。ノッカーとして遊撃の名手宮本氏が登場すると「それまでちょっと泣きそうだなとか、そういう気持ちはあったんですけど、一瞬でどっか行きました。本当にやるのか。ミスできねえぞ」。三遊間に優しく転がったゴロをさばくと、野村が守る一塁へストライク送球し、大喝采を浴びた。

刺激たっぷりの1日だった。守備では新庄監督から内野4ポジションに入ると聞かされていた通り、1回からイニングごとに位置が変わった。先発投手の上原には冗談で「飛ばさないで」と本心を伝えていたが、そうはいかない。三塁から一塁に代わったばかりの2回先頭でポランコの打球が、いきなり転がってきた。昨年、移籍後初失策を記録したのが一塁を守った4月27日オリックス戦。ドキドキのポジションで、この日唯一の守備機会が訪れ「あの試合がよぎった。焦ったんですけど何とか捕れて良かった」と苦笑いだった。

5回の右翼の守備も「聞かされていませんでした」。途中交代したが「ライトスタンドのファンの方と近いところであいさつできました。監督からのプレゼントだと思う」。ベンチに引き揚げると、指揮官と抱き合ってからキャップを取り、スタンドに一礼した。

派手さはないが、内野すべてを守れるユーティリティー選手。「2軍暮らしが長かったので今日やめることになっても、あの時、あれをしてれば良かったなとか、そういう後悔はしないように。準備の後悔だけはないようにずっとやってきた。取り組みには誇りを持ってきた」。引退試合で先制打を放ち、5ポジション無失策で締めた。「引退試合にセレモニーもやってもらって。自分が主役で終われるなんて思ってもみなかった。こんな幸せな日はない」。すがすがしい表情で、選手生活に幕を下ろした。【永野高輔】

○…引退セレモニーでは恩師や後輩から多くのビデオメッセージが届いた。宮本氏には「入ってきたときは全部平均点の選手。心配してたんですが必要な選手になるべく、いろんな勉強をしていた。素晴らしく真面目な選手」。21年まで指導を受けた栗山英樹前監督からは「内野守備4つとも安心して出せる選手は初めて見た。努力のたまもの。これから、どんな人生を歩むのか楽しみ」。元チームメートの杉谷拳士氏やヤクルト山田も登場し、ねぎらいのコメントが贈られた。

■根本悠楓、しっかり締める

日本ハム根本がホーム最終戦となる28日ロッテ戦に先発する。今季は3戦すべて新球場エスコンフィールドで登板し、2勝0敗。ラストマウンドを任され「いつもより気持ちの入り方が違う。家族も見に来る。しっかり締めて終わりたい」と意気込んだ。新庄監督の続投も発表され「今年はローテに入って回れなかったので、来年は監督に使ってもらえるような投手になりたい」と進化を誓った。