オリックスが誇るベテラン守護神が甲子園の「魔物」を封印し、阪神に競り勝った。平野佳寿投手(39)が1点リードの9回に登板し、2四球で2死一、二塁のピンチを招いたが、最後は4番大山を空振り三振。自身2年ぶりとなるシリーズ通算2セーブ目は、同最年長セーブとなった。チームは2連勝で2勝1敗とし、白星を先行。1日の第4戦で2年連続の日本シリーズ制覇へ王手をかける。

  ◇  ◇  ◇

沸きに沸く甲子園で、ファンも味方も、百戦錬磨の中嶋監督も、手に汗握った。「しびれるという試合。本当の意味でしびれました。本当に死力を尽くした」。見守っていた指揮官も全て出し切った。

1点差に詰め寄られて迎えた9回。マウンドに上がったのは守護神、平野佳。先頭の原口に四球を与えると、虎党の大歓声が聞こえてきた。「ちょっとね、最初つぶされかけたから、ちょっと危なかったですけど」。しかし、経験豊富な39歳は焦らなかった。

近本を二ゴロに仕留めると、続く中野を146キロ直球で空振り三振。森下に再び四球を与え、2死一、二塁のピンチ。それでもマウンドで1人平常心だった。「一塁が空いていたから、今日彼は当たってたし、あれで良かったですけど」。最後は4番大山にフルカウントとしながら、134キロフォークで空振り三振。ため息の阪神ファンに囲まれながら、力強くガッツポーズした。

緊迫の時間を乗り越え、日本シリーズ最年長セーブをマーク。「うれしいですけど、こればっかりは運もあると思う」。戦いを終えたベテランは、穏やかな表情で喜んだ。座右の銘は「一所懸命」。高校の担任だった田中先生に教わった大好きな言葉だ。「1つのところだけ一生懸命やりなさい、というのを教えてもらった時にすごく刺さった」。抑えというポジションに全力を尽くす姿に、後輩たちの人望も厚い。

日本シリーズ直前、阿部、小木田、黒木を中心に中継ぎ陣がサプライズでTシャツをプレゼント。日米通算250セーブを祝う写真入りの1枚。「いろんなことを学ばせてもらっていることへの後輩のぼくらからのお返し」と阿部らが思いを込めた1枚に、平野佳も「ありがたいですね。うれしいです」と喜んだ。

走者を出しても抑えてくれる。指揮官の信頼は揺らがない。「3人でバンと帰って来てくれたらあれですけど、どうしてもこういうゲームになると思う。何点差でも勝ちは勝ち。勝ったらつながると思ってやっています」。ドキドキハラハラでも、大きな1点差勝利だった。【磯綾乃】

 

▼オリックス平野佳が21年<5>戦以来のシリーズ通算2セーブ目。平野佳は39歳7カ月で、88年<1>戦東尾(西武)の38歳5カ月を抜くシリーズ最年長セーブとなった。

【熱戦!日本シリーズ特集ページ】