「X JAPAN」のYOSHIKIのドラムの余韻が残る場内に、オリックスの勝利を決定づける打球音が響いた。紅林弘太郎内野手の打球が、左中間スタンドに向かって伸びる。2-1の5回1死二塁。得点圏に走者を置いたときの登場曲「紅」に送られ、23年の頂上決戦を最終戦に持ち込む2ランを放った。

「後ろに森さん、頓宮さんというすごいバッターがいる。ぼくはつなげるという意識で打席に入りました。すごくいい感触で捉えられました」

21歳8カ月での日本シリーズ本塁打は、球団最年少タイ記録。昨年第7戦(対ヤクルト)の太田と並んだ。今シリーズ初のスタメン3番起用に、中押し2ランで応えた。

阪神に王手をかけられて迎えた第6戦。中嶋聡監督は「3番・遊撃・紅林」という勝負手を打った。ロッテとのCSファイナルステージで左手首を痛めた。今も防具や試合後のケアは欠かせない。だが第2戦から4試合連続安打をマークし、打率を4割まで上げてきた紅林を3番に抜てき。その起用がはまった。「期待して出したんですけど、まさかのホームランでびっくりしました」。監督の期待を超えた。

巨人坂本のように攻守の活躍を期待され、19年ドラフト2位でオリックスの一員に。打撃は華々しく、堅守も代名詞。今年の球宴で、西武源田と話す機会に恵まれた。侍ジャパンの守備の要に「投げるのも足で、捕るのも全部足で、腕でやっちゃいけないというのを聞けました。グラブさばきは最後の手段、基本足でと聞いたので、足を使って、若いんで、やっていきたいです」と守備の意識をいっそう高めた。

この日も堅守で山本を助け「日本シリーズ初戦もああいう感じだったんで、今日はやってくれるだろうと思って後ろから見ていました」と大エースいじりも忘れなかった。チームを勢いづけ、和ませた活躍。新たなシリーズ男が誕生した。【堀まどか】

▼21歳8カ月の紅林が5回にシリーズ初本塁打。オリックスでは昨年<7>戦太田の21歳8カ月に並び、球団最年少での本塁打となった。また、シリーズに3年続けて出場している紅林の安打数は、21年7本、22年8本、23年7本で通算22安打。21歳までのシリーズ通算安打では、86~88年清原(西武)の22安打に並ぶ最多となった。清原は19歳の86年が11本で、87年5本、88年6本の計22本。

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