楽天銀次内野手(35)が22日、今季限りでの現役引退を表明した。

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楽天担当になってすぐだったので、10年オフのこと。先輩記者に22歳の銀次を紹介され、話の流れから一緒に“滝行”に行くことになった。

地元の運転に慣れた人に車を出してもらい、宮城の栗原市にある小僧不動水神社へ。宮司さんから水温5度と聞いて、銀次は一瞬たじろいだが、すぐに意を決してふんどし姿になった。鉢巻きを付け「ハライドノオオカミ、ハライドノオオカミ」と唱え、1軍定着を願う荒行を敢行した。

私も一緒に滝に打たれた。実際に水につかったのは数分程度だったが、真冬の東北。言うまでもなく、体の芯から冷えた。帰り道。どこかの温泉に寄ろうかと誘ったら「今日はやめときます。せっかくの御利益が流れちゃいそうで」と返され、少し面食らったのを覚えている。

後日、カラー写真で滝に打たれる銀次を紙面に飾らせてもらった。スポーツ新聞のオフ企画。銀次はノリでやってくれたのだと思っていたが、真剣だった。プロ5年目の同年、ついに1軍デビューを果たすも、ケガにも泣き2試合にとどまっていた。「来年はケガなくいけますように」と、滝に打たれながら本気で願っていたことを知った。

それだけの話なのだが、勝負の世界に生きる人の真剣味に触れた気がした。翌11年のシーズン中、ポジションが重なる主力選手が遠征先でケガしたと聞いた当時2軍の銀次が、チームに同行取材していた私に「○○さんがケガしたって、本当ですか?」と連絡してきたこともあった。よし、次は俺の番だという、ギラギラした思い。それほどの熱さ、貪欲さを持っていた。その後の活躍は周知の通り。高卒捕手で入団しながら、捕手としては苦労し、内野手に転向。バット1本のたたき上げで主力にまでなった原動力だった。

「2軍ならいつでも3割、打てます」と言っていたのも印象に残る。2軍で3割ぐらい打たないと、1軍では勝負できないという意味だと解釈した。

常々「プロで20年、やりたい」と言っていた。2年、届かなかった。悔しさ、未練は、あると思う。でも、銀ちゃん、本当にお疲れさまでした! まずは東北の温泉につかって、ゆっくり体を休めて下さい。【11~14年楽天担当=古川真弥】

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