西武呉念庭内野手(30)が1日、今季限りでの退団を発表した。来季からは故郷台湾でのプロ野球に挑戦したい意向を示した。

会見場にスーツ姿で現れた。笑顔でいたが、ネクタイを締め直そうと下を向いていると、表情が崩れていく。鼻を押さえ、はなをすすり、前を向いた時にはもう鼻は真っ赤だった。

フラッシュ音が響く中、話し出す。

「えー、すいません…。私ごとですけども、あの、えー、今季で…退団することになりましたんで。本当に8年間、お世話になりました」

涙がとめどなく出る。

「今後は台湾のほうに戻って野球を続ける予定なので、引き続き応援のほうもしてくれるとうれしいです。まぁ、その、15年前台湾から来て、日本でプロ野球選手になる夢がずっとあって、本当に、こうやってライオンズに指名してもらって、8年間なんですけど、本当に厳しいプロ野球を8年間やってこられて本当に良かったので。今後のステージにも経験を持って進みたいなと思います」

少し落ち着いてきた。しかし、再び。

「あと…在籍8年間の間、たくさんのファンの方に応援されて、愛されて。納得した数字は残せなかったんですけど、本当にファンの声援があったからこそ、8年間やってこられたので。本当にファンの方に感謝しています」

はなをすする。

「8年間の間、監督をはじめ球団本部、そして球団スタッフ、裏方さんも本当にみんな優しく接してくれて。本当に、離れるのが本当に寂しくて。まぁ、でも自分が大きな決断を決めて台湾でやることに決めたので。そこはみんな、本当に尊重してくれて応援してくれたので。本当に感謝の気持ちでいっぱいで。その応援に応えられるように、今後も野球を続けたいと思います。本当にありがとうございました」

3分半、しっかり話しきった。故郷でプレーしたい思いは、徐々に芽生え始めていた。

「キャンプ後にGMと話をして。台湾で現役を続けたいと、台湾のステージでプレーしたいという思いを伝えて。いつかは台湾でやりたい思いはあって、今年のタイミングにそうですね、至りますね。GMも最初はびっくりして、でもいろいろ話しながら最後のほうは尊重してくれて、応援してくれて」

年明けに台湾に戻り、台湾プロ野球でのプレーを目指していく。

「今後は何も決まっていないんですけど、まず台湾に帰ってそこの話をして、台湾プロ野球はドラフトが7月にあって対象になると思うんですけど、本当そこはまだ未定なので。帰ってから考えようと思います」

仲間との思い出は多い。

「昨日の選手会ゴルフでみんなの前で伝えさせてもらって。たくさんの先輩方とかコーチ、同級生、後輩とか、本当に昨日まで知らせなかったんですけど。いざ言うと寂しい気持ちはあるので。いつか、また野球やればまたどこかで会えると思うし、そこを信じてまた次のステージをやりたいですね」

ファンも。

「今年のファン感出たんですけど、こうやって別れ…ちゃんと伝えたくて、この場を借りて。本当にライオンズファン含めて日本のすごく応援してくれるファンもいるので、この場を借りて。いい時も悪い時も本当に声援で応援してくれて。期待に応えられなかったんですけど、僕の人生にとって本当に濃いライオンズでの8年間でした」

中学を卒業し日本にやって来て、成功した。世界に飛び出し夢をかなえた。

「夢に向かってどんどんチャレンジしながら、必ずかなうっていう信念を持ってやれば、必ずかなうことができるので。僕もそういう信念でやって、本当に夢をかなえることができたのでよかったです」

また、いつか。

「野球はもちろんやりますし、その、野球との交流とか国際試合も含めて、またいつか日本でなんかできればいいなと。野球を通じて日本と台湾の、もっと深めるような存在になれたらそれが一番うれしいです。台湾と日本の仲をどんどん深められたら、それが一番うれしいです」

会見場の隅では奥村剛球団社長(56)ら球団幹部たちも、その決意と涙を見届けた。「ありがとうございました」。自然と拍手が起きた。【金子真仁】