阪神前川右京外野手(20)が意地の「ライデル打ち」だ。中日戦(バンテリンドーム)の2点を追う9回。守護神マルティネスのフォークに食らいついて一、二塁間を破る適時打を放った。キャンプから続けてきた激しい左翼争いはいよいよクライマックス。3月に入って、本命ノイジーの復帰で出番が減っていたが、若武者スラッガーもマルチ安打を記録し、1歩も引くつもりはない。

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前川は極限まで集中力を高めて打席に入っていた。9回1死一、二塁。マウンドには昨季防御率0・39のマルティネス。その初球。鋭いフォークに必死に手を伸ばし、バットの先に当てた。「メキッ」と鈍い音を残した打球は一、二塁間を抜けていった。

「簡単に、ダメなままで終わらなかったのはよかったかな、と思います」。

3試合ぶりのスタメン。だが、高橋宏に対して初回に見逃し三振。5回には左腕橋本のスライダーにバットが空を切った。2三振といいところがなかったが、8回にはセットアッパー松山から左前打。そして9回は守護神から適時打を放ち、挽回してみせた。「昨日の反省を生かして、ストライクゾーンをしっかり打つという気持ちでした」と振り返った。

打線がつながりを欠く中、最終回のチャンスで見せた打撃はやはり魅力だ。岡田監督は「使うたら打つよ」と、これくらいは当たり前と言わんばかりだった。

キャンプから勃発した外野争い。森下が抜け出し、実質まだ空いているのは左翼だけだ。競争は野口、井上、ノイジー、ミエセスらのだんご状態でスタート。2月中旬、ノイジーが右肘の張りを訴え実戦出場が遅れた。ここぞとばかりに前川は猛アピールを続け、監督からキャンプの野手MVPと評価された。

ノイジーが復帰した3月からは前川の出番が、少しずつ減っていた。N砲は前日15日の中日戦で、得意の素早い返球でダイレクト補殺。「やはりノイジーか」の雰囲気があった中で若武者が、食らいついた。

「外野(争い)が激しいからなあ」と岡田監督もニンマリ。前川を後押しするデータもある。巨人の開幕投手は戸郷。前川は昨季4打数2安打と打っており、対照的にノイジーは18の3。松山、ライデルの両右腕打ちは大きなアピール材料になる。オープン戦は残り6試合。開幕スタメン、そしてその先のレギュラー獲得へ、アクセルをふかし続ける。【柏原誠】

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