輝が決めた! 阪神佐藤輝明内野手(25)が待望の1号決勝ソロで4日ぶりの最下位脱出を導いた。

9回に2点ビハインドを追いつき、迎えた今季初の延長10回。6番手木沢から右中間席に運んだ。打率1割台に低迷して2試合続けて6番に下がった大砲が、ここ一番で起死回生弾。昨年の日本一軍団が今季3カード目で初めて初戦を取り、佐藤輝の復調とともに逆襲に転じる。

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弾丸と化した打球はどこまでも伸びた。これが佐藤輝だ。同点の延長10回。木沢のカットボールをとらえ、右中間最深部に一直線。くるりとバットを投げ、ゆっくり歩き出した。

「やりました! 最高です! 打った瞬間、完璧でした」。神宮でのヒーローインタビューで絶叫した。どちらに転ぶか分からない展開。驚異の粘りで9回に2点差を追いつき、今季初の延長戦へ。負けるわけにいかなかった。

苦しんだ。オープン戦の最後に復調して開幕を迎えたが、再び泥沼に沈んだ。タイミングが取れず、中途半端なスイングも連発した。開幕カードは1安打。3日には岡田監督の指示で、初めて早出特打に臨んだ。それでも前日4日まで打率1割4分3厘。前日から2日連続で5番から「6番」に降格していた。「もっとしっかり、打たないといけない立場なので…」と責任を痛感している。

試行錯誤の毎日。この日は練習で大山のバットを手にした。最初2打席は大山の白木バットでフライ2本。4打席目からは今度は黒い大山バットに持ち替え、延長で渾身の一振りを決めた。キャンプ中にも試していたバットだった。「そんなに差はないけど、ちょっと変わるかなと思って。打ててなかったので、何か、きっかけになればと思って」。必死だった。

昨年は絶不調時に2軍落ちという荒療治をされたが、今年は違う。首脳陣はどんなに悪くても、試合から外すつもりはない。昨年はあくまで特例措置。「真の主力」になるための1年と位置づけられている。苦しんでも逃げる場所はない。打つしかなかった。

本塁打は自分のアイデンティティー。「ベストの本塁打」を問われると、昨年の優勝を決定づけた1発を挙げる。しかし「入るかは分からなかった」という手応えだった。「あれはファンの声援が後押ししてくれたと思う。僕の人生で一番最高の1日でした」。ファンを喜ばせる1本こそが、スラッガーにとって最上の喜びだ。「寒い中、応援してくださって力になりました」と虎党に直接、感謝の言葉を届けた。

佐藤輝は「これをきっかけに、もっとどんどん勝っていけるようにしたいです」と久しぶりに笑顔を見せた。まだ開幕直後ながら“最下位”の不名誉からも脱出。役者がそろってきた阪神が、王者らしさを取り戻してきた。【柏原誠】

▼佐藤輝が今季29打席目で1号を放った。過去最速は1年目の21年5打席目。22年は40打席目で、昨季は75打席かかっていた。

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