<中日4-5阪神>◇15日◇ナゴヤドーム

 阪神金本知憲外野手(43)の連続試合出場が、史上2位の1766試合で止まった。開幕から3試合に先発出場していた金本だが、この日はスタメンから外れた。8回2死一塁の場面で代打に立ったが、走者の俊介が盗塁に失敗して打席が完了しなかった。その裏の守備にも就かなかったため、98年7月10日から継続していた記録が途切れた。

 重苦しい雰囲気で待ち受けた報道陣の前に、金本は満面の笑みで登場した。連続試合出場のストップ。こともなげに言った。

 金本

 全然(気にしてない)。(むしろ)笑えたぐらい。

 広島時代の98年7月10日のヤクルト戦から足かけ14年、1766試合続けてきた大記録が止まった。元祖鉄人・衣笠祥雄に次ぐ歴代2位の金字塔。骨折しても、頭に死球を食らっても休まなかった男の皆勤記録が、余力を十分残して途絶えた。エンディングは、誰もが予期せぬ形で突然に訪れた。

 金本

 誰がバッターであれ、盗塁にはビックリしたけどね。

 開幕4戦目で初めて先発を外れ、2点リードの8回2死に代打で登場。四球で出ていた俊介がその2球目、ノーサインでスタートを切った。甘いスライダーを、金本は見送った。谷繁の強肩が俊介を刺しタッチアウトでチェンジとなった。

 8回裏。そのまま守備に就けば記録は継続できた。だが背番号6は苦笑いでベンチに腰を下ろしていた。

 真弓監督

 (俊介は)セーフになると思って走ったんだろうけどね…。取り立ててサインは出してない。(記録ストップはベンチで)気づいてたよ。

 監督も複雑な表情だった。試合前、右肩の“積極的休養”で先発を外れることを話し合った。その時、金本はこう申し出ていた。

 金本

 監督、記録を気にして采配は振るわないで下さい。

 2度と成し得ない記録を放棄してまで、チームの勝利を願う気持ちは伝わっていた。長打狙いであと1点が欲しい場面の勝負手として代打で送った。想定外の記録ストップに、同監督も気持ちを整理できていないように見えた。そんな周囲の気づかいを察するように、金本が言葉をつないだ。

 金本

 試合前からスタメンがないのは決まってたし、監督にも無理して出すのはやめて下さいと言ってたことだからね。それよりナゴヤドームで勝ったのが大きい。みんな、そっちを喜ばないと!

 弟分の鳥谷、新井貴の適時打や林威助、俊介の1発で5得点。投打がかみあい、昨年2勝しかできなかったナゴヤドームの初戦をものにした。希代の記録ストップは、鬼門での勝利を上回る衝撃だ。だが勝利を喜ぶ鉄人の笑顔は、これでいいとうなずいていた。【松井清員】