大関貴景勝(22=千賀ノ浦)がケガから復帰してかど番脱出なるか、番付発表前の現時点で三役候補の阿炎(25=錣山)、竜電(28=高田川)、朝乃山(25=高砂)ら上位総当たりの有望株がどんな活躍を見せるか、小兵の炎鵬(24=宮城野)は土俵狭しと動き回り幕内の座を守れるのか-。大相撲名古屋場所(7月7日初日、ドルフィンズアリーナ)も見どころは満載。その中の1つに、横綱白鵬(34=宮城野)の復活優勝成るか-もある。現時点で出場の明言はないが、名古屋に向け前向きに調整を進めている。

史上最多を独走する42度の優勝を誇る白鵬だが、最近5度の優勝のうち4度は、前場所を休場(途中休場3)して成し遂げている。本来なら1度しか使われないであろう「復活劇」の言葉も、白鵬の場合、毎度おなじみのフレーズになっている。白鵬の強さを如実に表しているのか、蛇ににらまれたカエルのような他力士の力のなさか-。どちらとも言えるような状況だ。

“勤続疲労”もあり、若い頃よりケガをしやすくなり、また回復が遅くなることもあり、無理を避けている。結果が求められる横綱として土俵に上がる以上、ぶざまな姿は見せられないから慎重にもなるだろう。しっかり治して土俵復帰するのは当然。その上で賜杯を手にし続けている。

こんなデータもある。昨年1月の初場所から、令和最初の場所となった今年5月の夏場所までの9場所で何と、初優勝力士が5人も誕生した。栃ノ心、御嶽海、貴景勝、玉鷲、朝乃山で、いずれも関脇以下。そして全てに共通するのは、白鵬が休場している場所ということだ(全休2、途中休場3)。鬼の居ぬ間の何とやら…ではないが、白鵬不在の場所は何かが起こる。逆に言えば残された横綱、大関陣のふがいなさが浮き彫りになっている。

私が以前に相撲担当だったころにも、同じような展開があった。91年名古屋場所から93年春場所までの11場所で、いずれも三役以下の6人もの初優勝力士を輩出した。ただしこの間、番付上からも不在の場所もあるなど、千代の富士のような絶対的な壁となる横綱がいなかった。

休場が相次ぐとはいえ、依然として孤高の横綱として君臨し、若手の壁として立ちはだかり続ける白鵬。その壁をブチ破ってこそ、真の世代交代はやってくる。並み居る挑戦者たちを蹴散らすのか、絶対王者の牙城を崩すのか、そのせめぎ合いが見たい。【渡辺佳彦】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)