IWGPヘビー級王者オカダ・カズチカ(30)が大記録に並んだ。ニュージャパン杯覇者ザック・セイバーJr(30)を34分58秒、レインメーカーからのエビ固めで仕留めた。関節技マスターの英国人に苦しみながら、11度目の防衛成功。棚橋弘至(41)が持つ最多記録に並び、次は挑戦者に名乗りを上げたその棚橋との直接対決で新記録を作る。

 オカダは関節地獄から生還した。決められ続けた手負いの右腕で、こん身のレインメーカーをぶち込んだ。勝ち名乗りを受けても、右腕を抱えた。「きつかった」。7822個の関節技を持つとする男に、何度も餌食になった。レインメーカーを飛びつき腕十字固めで返される脅威。ただ、心も腕も折れない。「レベルの高い関節技でした。でも、お前と戦ったことで、もっと強くなりました」と誇った。

 「1つの語れる試合をしたい」。信念が生まれた。きっかけは16年6月の王座戴冠後から更新し続ける最長保持期間だった。「超えたよと言われた瞬間に、誰も知らなかった」。前保持者の橋本真也の記録(489日)は認知が少なく、感慨は皆無。記録への興味が消えていった。「そんなことにこだわるより、『あの試合、生で見ていたよ』と言われたい」。

 その思いは海外ファンを眼前にし、さらに際立つ。昨夏に続く先月の米国遠征。4372人満員の会場で、「OKADA!」の絶叫を聞いた。「日本のプロ野球の試合を米国でやっても埋まらないでしょ。でも、プロレスなら埋まる。それがプロレスのパワー」。顔役として、そんな「語れる」試合をしたい。

 8キロもあるベルトを自ら持ち歩き、「飛行機の超過料金、結構払ってます」と片時も離さない。試合後、挑戦者に名乗りを上げた棚橋を呼び捨てにし、「棚橋を軽く倒してV12。気が早いと思っていたら、あっという間にV100いくぞ」と豪語した。ベルトを手放す気は毛頭ない。「記録にこだわりはないけど、素晴らしいプロレスを届けますよ」。信念で戦い続ける。【阿部健吾】