WBO世界スーパーフライ級2位井岡一翔(30=Reason大貴)が、文句のないTKOで日本男子初の4階級制覇を達成した。

同級1位アストン・パリクテ(28=フィリピン)に技術力でペースを握ると、10回に右カウンターからメッタ打ち。

レフェリーストップで10回1分46秒TKO勝ち。1度引退から復帰して昨年の4階級初挑戦は失敗も、2年2カ月ぶりの日本で悲願をつかんだ。王座奪回で晴れて近日中にも再婚し、今後は最大の目標である海外でビッグマッチ、団体統一戦へと踏み出す。

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井岡がTKOに仕留め、ついに4本目のベルトをつかんだ。10回、劣勢だったパリクテに攻め込まれた。ロープを背にしたところで右カウンター。物の見事に決まると「ここしかないとまとめた」とラッシュ。右ストレートでのけ反らせるとレフェリーが止めた。井岡は両腕を突き上げて絶叫した。

昨年大みそかの復帰2戦目の初挑戦は「いまだ年を越せていない」という1-2の判定負け。すぐに訪れた再挑戦で、それも2年2カ月ぶりのホームのチャンスをものにした。茶色のベルトを手に「重たい。これをとることだけ考えて生きてきた」。涙声で喜びを表した。序盤は距離が遠かったが、3回にはペースを握った。相手を下がらせること、相手の右から体を遠ざける作戦。何度も空を切らせると、巧みな動きから踏み込んで攻めた。技術、経験では上手。9回までの採点で3~5ポイント差の3-0とリードしていた。

7回には接近戦から連打で攻め込まれた。「勝負に来た。ここで打ち勝てないと勝てない」。この回の後半は反撃して盛り返し、ジャッジ1人は井岡にポイントを与えた。前戦は攻め込めず惜敗も「あの経験も生きた。技術だけでなく勝負するところは勝負しないと」。

30歳となっての初戦に「ラストチャンス」と決意を胸にしたリングだった。12歳の頃から知るサラス・トレーナーもその思いは感じていた。1度は失敗も「近道を選ばないのが成功の道」と、井岡の発したこの言葉に勝利を確信していた。

この日は都内の自宅から会場入りした。家族の支えもあった。昨年離婚したが、30歳代の元モデルと同居生活を送り、秋には第1子も誕生する。4階級制覇をしたことで「近々届けを出します。王者となってからと思っていた」と明かした。

昨年の大みそかから井岡を含め日本勢は黒星続きで、日本人の挑戦は実質11連敗だったが、これもストップ。具志堅用高を抜いて日本人最多の世界戦15勝目。日本人初の看板を手にし、現役復帰の最大の目標である海外でのビッグマッチを目指す。

「死に物狂いで海外へ行くチケットをつかんだ。他団体王者と戦いたい」。新たな目標に団体統一戦を挙げ、標的にはWBC王者エストラダ(メキシコ)の名を挙げた。4階級制覇のストーリーに続き、再び新たな歴史を刻んでいくつもりだ。【河合香】