これが大横綱、白鵬の力だ。立ち合いで今場所6度目となる左張り、右かち上げ。洗練されてきた必勝パターンで豪栄道の動きを止めると、ハズ押しの電車道だった。「元気な大関を一気に持って行って、気持ちいいですね。満足感があります」。好調な大関陣を2日連続で圧倒。テレビ解説の北の富士氏(元横綱)に「粉砕だね」と言わしめる一撃の威力は格別だった。

 満員札止めが続く館内に響き渡る「豪栄道コール」すら力に変えた。ご当地大関への大声援に包まれる完全アウェー。「(声援が)デカくなったね。気持ちいいわけではないけど、認められているということ」。評価の裏返しととらえ、わずか2秒で沈黙させた。

 1差で追っていた展開から、一夜で単独トップに躍り出た。3場所遠ざかる36度目の優勝については「関係ないわけではないけどね。どこかにしまっておきたい。まだまだ」とおごりはない。最近は終盤で失速することも多かったが、朝稽古後にはダンベルで上腕を鍛えるなどの試行錯誤が実り、調子は右肩上がり。「見ての通りです」と自信満々に答える姿に、死角はない。【桑原亮】