元横綱日馬富士関(33)による暴行問題を調査している、日本相撲協会危機管理委員会の鏡山部長(59=元関脇多賀竜)が5日、都内の貴乃花部屋を訪れた。暴行を受けた平幕貴ノ岩(27)が冬巡業を休場中のため、診断書の提出を促す文書を持参。師匠の貴乃花親方(45=元横綱)に届けるつもりだったが不在で、文書を預けて引き揚げた。一両日中にも元日馬富士関は鳥取県警に書類送検される見込みで、その後は危機管理委の事情聴取に貴ノ岩が応じる予定。無言の被害者周辺に徐々に動きが出始めた。
鏡山部長が、立田山親方(元前頭薩洲洋)とともに貴乃花部屋を訪れたのは、午後2時28分だった。立田山親方が3度チャイムを押しても応答なし。仕方なく鏡山部長は、手にしていた封筒をポストに入れて引き揚げた。するとその後、部屋の中から関係者の女性が出てきて追いかけ、すでに車に乗り込んでいた2人に声を掛けた。鏡山部長は、その女性に向かって「貴乃花親方とは書面でやりとりしているので、それをお持ちしました」と説明した。
書面は、貴ノ岩の診断書を速やかに提出するよう促すものだった。現在は冬巡業の最中で、貴ノ岩はこれを欠場している。原則として十両と幕内力士は巡業に参加。だが巡業部長代理としてこの日、福岡・朝倉市を慰問した春日野広報部長(元関脇栃乃和歌)は「貴ノ岩の診断書はまだ出ていない」と、本来は休場に必要な手続きが、巡業休場の力士の中で唯一、完了していないことを明かした。
危機管理委から貴乃花親方に電話も通じず、この日の訪問となった。鏡山部長は「(同親方から連絡は)何でも書面でと言われている。そういうものに応えるのが相撲道じゃないのか。ルールなんだから」と困惑した様子だった。
だが訪問から40分後の午後3時8分には、貴乃花親方は部屋に戻った。そんな行き違いが多いだけに、診断書の提出は危機管理委にとっては、貴ノ岩への事情聴取に向けた準備にもなる。現時点での症状を把握でき、20日に定める最終報告に向けて素早く対応可能。元日馬富士関は一両日中にも書類送検の見通しでその後、貴乃花親方は危機管理委に協力すると約束している。
また相撲協会はこの日、報道各社に向け「お願い」と題し、異例の発表を行った。内容は、高野山別格本山清浄心院の池口恵観氏の話として「貴乃花親方が八角理事長に対して、事前に連絡している」といった一部報道は誤りであるというもの。いまだ無言の、被害者サイドの情報の混乱を避ける動きも出てきている。