協会トップと傷害事件を起こした元横綱の師匠が、厳正な処分を受けた。日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は、理事長として残り任期3カ月の月給144万8000円の3カ月分、434万4000円を返上する。伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は理事を辞任し、役員待遇委員に降格となった。

 危機管理委員会が作成した調査結果報告書によると、八角理事長の処分は「国技たる大相撲の評価を著しく毀損(きそん)するもの」「統率する立場にある以上、相応の責任がある」と理由付けされた。社会的反響や悪質性など事件そのものはもちろん、事件の情報入手から調査実施の決定まで後手を踏んだことも「協会を代表する八角理事長に相応の責任がある」と記された。理事会後の記者会見では「早期解決に向け全力で取り組んだが決着しておらず責任を痛感している」と苦悩の表情を浮かべた。

 先月29日、元日馬富士関の引退届を提出に八角理事長の元を訪れた際、伊勢ケ浜親方は自らの理事辞任を申し出たという。調査中だったため同理事長に慰留されていたが、この日の理事会出席を最後に、理事から役員待遇委員へと降格となった。理事として部長を務めていた大阪場所担当から、職務は監察副委員長となる。

<危機管理委員会 結果報告要旨>

【発端】

 9月中旬の夜、東京・錦糸町のモンゴルカラオケバーで休場中のモンゴル出身力士が飲酒しているのを貴ノ岩が注意。その言葉遣いなどが乱暴だったと注意した白鵬の友人と口論。

【本件】

 10月25日夜の食事会(1次会)で白鵬が前記の貴ノ岩の言動を説教。「そんなことは言ってません」と貴ノ岩は答え日馬富士がその場をおさめる。2次会は同日午後11時過ぎから約3時間。白鵬と日馬富士が照ノ富士と貴ノ岩らに説教。一段落したと思った貴ノ岩が彼女からきたLINEを見ようとスマホを操作。日馬富士の叱責(しっせき)に「すみません」と謝罪するも、逆ににらみつけるような表情に見えた日馬富士が、貴ノ岩の頭部や顔面を平手やカラオケのリモコンで殴打。その回数は十数回で数分と推定。白鵬を差し置いて止めることにためらいがあったと話す者もいた。

【協会の対応など】

 11月1日に鳥取県警から協会事務局に被害届が提出されている連絡が入る。3横綱と照ノ富士を聴取したい旨を伝えられた協会は「可能であれば場所後に」と返答し同県警も了承。貴乃花巡業部長ら関係者からの報告がない一方、双方が握手で和解したなど情報が入ったため両師匠間で話し合いが持たれるであろうと考えるなど、緊急事態発生の認識を持たなかった。

【発覚など】

 同11日の理事会も緊急に対応すべき案件とは認識せず報告はなし。鏡山危機管理部長が両師匠間で話し合うよう要請。九州場所3日目の同14日に一部報道で表面化。同委員会で調査することを決めた。

 ◆日本相撲協会の危機管理委員会 相撲協会が不祥事の予防や発生した場合の適切な対応などを目的として2012年に設置。関係者への聴取などの調査を行い、協会への報告や処分案をまとめる役割を担う。協会の元外部理事の宗像紀夫氏(元東京地検特捜部長)が初代委員長を務め、16年に高野利雄外部理事(元名古屋高検検事長)が委員長に就任。力士出身者では尾車(元大関琴風)鏡山(元関脇多賀竜)春日野(元関脇栃乃和歌)の各理事もメンバー。