安美錦引退会見「本当にいい力士人生」けがにも感謝

元関脇安美錦の安治川親方(40)が、笑顔で引退を報告した。11日目の17日の打ち出し後に、引退、年寄安治川襲名が承認されたことを受けて、名古屋市のドルフィンズアリーナで会見。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)同席で約25分の会見後、雑談を交えて単独で約40分の囲み取材に対応、計1時間余りも思いの丈を語った。涙は見せず、持ち前の軽妙な語り口で報道陣の笑いを誘う“業師”ぶりは健在だった。

    ◇    ◇    ◇

1時間余り話した安治川親方は、最後に思わず本音を漏らした。「勝負しないというだけで、気持ちがこんなに楽になるんだな」。午後3時前。出場していれば、自身の出番だった十両取組の時間帯に、着物姿で雑談する自分を客観的にとらえてつぶやいた。引退会見中に何度も「次にケガをしたら終わりだと思っていた」と打ち明けた、22年半の現役生活の晩年とは違う心境が新鮮でもあった。やり切った思いは強く「すっきりしている。悔いはまったくない」と断言した。

2日目に敗れた竜虎戦で右膝を痛め、3日目から休場した。元大関魁皇と並ぶ歴代1位の関取在位117場所目の10日目に引退を表明。「(魁皇の記録に)並べただけでよかった」とかみしめた。37歳で左アキレス腱(けん)を断裂、十両に陥落してからは常に引退危機。それでも「ケガと戦ったというよりは一緒にやってきた仲間。相撲と向き合うことができたのはケガのおかげ。ケガにも感謝している」と笑って話した。

通算金星は8個。「初めて取った金星は武蔵丸戦。武蔵丸さんはすごく大きかったし、土俵に上がって初めて『怖いな』と思った。貴乃花さんは(自分が)最後の相手になってしまい、いろいろと葛藤はあったけど、僕をここまで大きくしてくれた一因でもある」。思い出は数知れないが、あえて思い出の一番に挙げたのは17年九州場所千秋楽の千代翔馬戦。39歳で再入幕し、8勝7敗で勝ち越して敢闘賞を受賞した一番だ。「みんなのおかげで、あそこに立てた」と、家族や周囲の支えを最も感じた。決まり手の上手出し投げも幼少期から磨いた技だった。

「好きな相撲をここまで長くできて本当に幸せだった。本当にいい力士人生だった」。汗はぬぐっても最後まで涙は見せなかった。この日の朝稽古で指導者デビュー。「ケガが治れば、がんがん胸を出すよ。若い衆が『ケガしてくれないかな』って思うぐらいね」。自身も周囲も笑いが絶えない、人柄がにじむ引退報告となった。【高田文太】

その他の写真

  • 引退会見で笑顔を見せる安美錦(撮影・小沢裕)
  • 引退会見を終え報道陣から贈呈された花束を手に笑顔を見せる安美錦(撮影・小沢裕)