ドラマ「君の名は」や舞台「放浪記」の脚本で知られる菊田一夫さんの名を冠した「菊田一夫演劇賞」の授賞式が先日、行われ、大賞の大竹しのぶ(61)、演劇賞の乃木坂46生田絵梨花(22)橋爪功(77)若村麻由美(52)古川雄大(31)らが出席した。過去の受賞者を見ると、大賞は森繁久弥さん、森光子さん、山田五十鈴さん、松本白鸚らそうそうたる顔触れで、演劇賞も松たか子、宮沢りえ、寺島しのぶ、井上芳雄ら今の演劇界を支える人たちが並んでいる。

大竹は13年前に演劇賞を受賞し、今回は主演舞台「ピアフ」で大賞を手にした。「20歳の時に舞台に初めて立った。稽古も楽しく、幕が開く前にワクワクした。その気持ちのまま41年続いてます。『ピアフ』には大きなエネルギーをもらっています」。ある日のカーテンコールで、中年女性が舞台前に駆け寄り、「もう1度『愛の讃歌』を歌って」と嘆願した。「『愛の讃歌』を歌い、お客様と『水に流して』を歌ったカーテンコールは忘れられない。演劇をやってきて良かった。一瞬でも光を与えられるように頑張ります。魂を込めて演劇をやっていきます」と力強く話した。

生田が本格的にミュージカルに挑んだのは17年「ロミオ&ジュリエット」。大竹の初舞台と同じ20歳だった。同年「レ・ミゼラブル」のコゼットを演じ、今回は「モーツアルト!」のコンスタンツェの演技などで演劇賞を受賞した。ミュージカル歴2年で演劇賞の背景には歌唱力、演技力、そしてスター性が加味されたのだろう。「自信がないとか、至らないところが山積みなんですが、このタイミングで、偉大な先人からの贈り物をいただいたことは大きな意味があるんじゃないか。今は実力というより『新しい時代に向けて頑張って』というエールと思います」と謙虚だった。

数多くのアイドルがミュージカルに挑戦したが、結果を残す人は少ない。それだけ、ミュージカルでメインを張るには激しい競争がある。生田も「平成に先輩方が、この道を広げてくださったおかげで、舞台に立てている。令和の時代は、私たち世代がバトンを引き継いで、活性化できるように頑張ります」と続けた。

大竹は20歳の初舞台から、41年間も一線を走り続けている。「ピアフ」で大賞を受賞したが、その舞台は再演を重ねるごとに進化している。生田はあいさつで「地に足をつけて、末永く精進したい」と、長い女優人生の中でまだスタート地点にあることを自覚している。精進の先に、大賞を手にする日が来るのだろうか。 【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)