1月にシアタークリエで上演されたミュージカル「シャボン玉とんだ 宇宙(ソラ)までとんだ」は、夢のような公演だった。

同作は、良質なオリジナルミュージカルを送り出してきた「音楽座ミュージカル」が88年に初演した。純朴な作曲家志望の青年悠介と、スリの親分に育てられた孤児の佳代が、宇宙人のラス星人の手助けもあって、愛を成就させるラブ・ストーリーで、キャッチーな数々の曲もあって、いくつかの演劇賞も受けるなど、音楽座の代表作となった。初演を見た時、逆境にもめげないけなげな佳代の姿に泣けてきた記憶がある。

87年に東宝が「レ・ミゼラブル」、88年に劇団四季が「オペラ座の怪人」を初演し、ミュージカルが本格的にブームとなった頃で、その中にあって、「シャボン玉とんだ」は日本のオリジナル・ミュージカルの可能性を感じさせる「光」でもあった。

その後も音楽座で度々再演されたが、今回は東宝が制作し、悠介に井上芳雄、佳代に元宝塚娘役トップの咲妃みゆが起用された。すごいのは、脇役に音楽座ゆかりのミュージカルスターたちが集結したことだ。初演で佳代を演じた土居裕子や、初演で初舞台を踏んだ畠中洋が宇宙人のラス星人を演じたのをはじめ、土居にあこがれて音楽座に在籍したこともある浜田めぐみが喫茶店のママ春江役で出演し、初演を見てミュージカルを志し、「レ・ミゼラブル」でジャンバルジャンを演じた福井晶一と、初演が音楽座に入り、ミュージカル人生のきっかけになったという吉野圭吾が喫茶店のマスター役にダブルキャストで登場したりと、クリエ公演にしては豪華な顔触れが並んだ。「シャボン玉」上演を聞いた浜田は「私を入れてほしい」と直訴して、出演が決まった。浜田は言う、「まさにドリームです」。

音楽座は「とってもゴースト」「アイ・ラブ・坊っちゃん」「マドモアゼル・モーツアルト」「泣かないで」など秀作を生んだが、96年に1度解散し、04年から再結成された。その後も「ラブ・レター」「7dolls」など良質のオリジナル作品を上演している。今回、音楽座が財産演目である「シャボン玉」を東宝に貸し出したのも、英断だと思う。こんなにすばらしいオリジナル作品があることを数多くの人に知ってもらう、大いなるきっかけになるだろう。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)