昨年から今年始めにかけて神田伯山、柳亭小痴楽が単独で真打ちに昇進し、話題となっている落語芸術協会(春風亭昇太会長)から、また新しい真打ちが誕生する。昔昔亭桃太郎門下の昔昔亭A太郎(41)、瀧川鯉昇門下の瀧川鯉八(38)、桂伸治門下の伸三あらため桂伸衛門(しんえもん=37)の3人で、先日、会見が行われた。

A太郎は180センチの長身イケメンで、高校時代にラグビー部、駒沢大時代にアメリカンフットボール部に所属していた。師匠の桃太郎は、A太郎が前座のころに、おすぎとピーコから「きれいな前座さんね」と言われたエピソードを明かし、「格好いい。格好でもう真打ちの資格がある、格好良さも実力のうちだけど、ご婦人方は格好良さに見とれて、笑ってくれない」と嘆いた。

A太郎は「2カ月前に師匠から『(三遊亭)円生を目指せ』と言われて迷っています。日舞を習って、タップダンスもやっている。アルファベット入りの真打ちは史上初めてだと思うので、立派な真打ちになりたい」。

鯉八の師匠の鯉昇は所用で欠席したため、鯉昇の兄弟子の桃太郎は鯉八について「例えると桂花ラーメンのよう。最初は戸惑うけれど、我慢して3回食べたらやみつきになる。そういうタイプです」と紹介され、鯉八は「真打ちに決まった時、思った以上にうれしかった。これからも血ヘドを吐きながら、面白い落語を作って、世の中に出ていきたい」。

伸衛門は4年前に春雨や雷蔵門下から桂伸治門下に移籍した。伸治は伸衛門について「私より本格派で、当人はまじめ過ぎる。肩の力を抜いて気楽にやってくれればいい」と期待すると、伸衛門は「古典を極めて、その後に余裕ができたら、新作もと思っています。真面目と言われるので、適当に楽しみながらやっていきたい。早くトリをとれるような芸人になって、10年後には寄席で客を呼べる中心の落語家になりたい」と抱負を話した。

披露興行は東京・新宿の末広亭の5月上席(1~10日)から始まる。落語芸術協会では、集客力のある若手がどんどん出ており、昇太会長も「結果がすべて。長く活躍してほしい」とゲキを飛ばしていた。【林尚之】

(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)