ソーシャルディスタンスやマスク着用など、感染対策を意識することで、道案内なども含め、声の掛け合いなどが少なくなっていると聞く。こういう時世だからこそ、当作での人と人とのつながりが、より心に響く。
原題は「The Kindness of Strangers」。ニューヨークでの、見知らぬ人同士の出会いや優しさが描かれている。老舗のロシア料理店がそのハブになる。
夫の暴力から子供たちを守るため逃避行するクララ(ゾーイ・カザン)をはじめ、救急病棟で激務をこなす看護師、出所したばかりの元レストラン経営者、絶望的に不器用で次々に仕事をくびになる青年ら、それぞれ事情を抱えている人々が登場する。生きづらさを感じながら、一生懸命で希望を見いだそうとする姿があり、登場人物の誰かのどこかに共感しながら見た。
大都会であっという間に衣食住や命を失う可能性もシビアに表現されている。震えるような場面がいくつもあったが、交錯する人々の温かさに救われる。クリスマスシーズンにぴったりで、人に優しくできないと感じることが多くなった今こその作品だった。
【小林千穂】(このコラムの更新は毎週日曜日です)




