血を分けた家族だからこそ、たった1度のボタンの掛け違えで、愛から憎へと感情が一変し、傷が深いからこそ致命的な断絶を生む。それがある日、突然、血縁という唯一無二の現実を突きつけられ、いやが応でも向き合わざるを得なくなる。そんな家族、少なくないのではないだろうか?
俳優の遠山卓は、幼い頃に自分と母を捨てた元大学教授の父陽二が逮捕されたと連絡が入り、久々に再会する。俳優業から結婚までやることなすことに注文をつけてきた父は、重度の認知症で別人のようになっていた。再婚した父をサポートし、本当は息子の活躍を喜んでいると教えてくれた義母直美も姿を消した。卓は、残されたメモや直美の日記を手掛かりに陽二の人生をたどる中で、再婚のいきさつがウソだったことなど父の実態に迫っていく。
森山未來と藤竜也が演じる父子が、胸の奥に突き刺さって離れない。藤は公開記念舞台あいさつで森山について聞かれ「俳優同士、カチンコが鳴るとインターアクション(芝居を通したやりとり)をする。良い俳優。親子の関係はうまくいくなと思った」と語った。
俳優同士の静かな闘いが刻み込まれたスクリーンで、もう1つ、印象的なのが藤が演じた認知症の芝居だ。特別功労賞を受賞した日本映画プロフェッショナル大賞授賞式で「私もスレスレのところにおりますから無理なく、恐らく最高の認知症の演技ができた」と語った。その演技でサンセバスチャン映画祭(スペイン)71年の歴史で日本人初の最優秀俳優賞を受賞した。【村上幸将】
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